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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2011年9月15日付け

 某日系団体がイベントで市立の施設を利用した。使用直後に訪れた市関係者が驚いた。というのも全くゴミが残されていなかったからだ。それを聞いた知人曰く「だったら清掃費が要らなくなるから、今度から賃貸料も安くなるんじゃない?」▼ピアーダかどうか、ゴミのポイ捨てを咎めたら、ブラジル人はこう答えるとか。「ゴミを捨てなかったら清掃人の仕事を奪うことになるじゃないか!」。その考えが人口に膾炙しているのか知らないが、確かによくゴミを捨てる▼その習慣を変えたい—とブラジル清掃及び固形廃棄物協会(ABLP)の吉村忠之会長(66、二世)が張り切っている。S・J・カンポスで開催中のセミナーに広島大学から教育学の教授を招いた=本日付7面詳報=。日本では教室清掃をはじめ美化運動は「残すものは感謝のみ」のスローガンのもと定着している。学校で生徒自身が掃除をするのは、東アジアの国がほとんどで世界的には稀だとか▼もちろん儒教や仏教の思想が根本にある。「掃除は心を磨く」と便所掃除を成功の秘訣とする感覚は理解されないだろう。ファシネーラに家事や掃除一切を任す家も多いことから、子供に掃除させたら親に怒鳴り込まれそうだ。講演では、環境保護の見地から清掃の理念を紹介するとか▼都民の清掃意識を変えた東京五輪を例に挙げ、「リオ五輪までには」と意気込む吉村会長。笠戸丸移民がサントスの移民収容所でゴミを捨てなかったことが他移民と比較し、驚きを以って記事になった。日本では未だにゴミ分別問題がブラジル人集住地区の大きな悩みであることだけ見ても前途は多難だ。(剛)

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