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火は小さいうちに消し、屋根は晴天の間に直せ!

アジア系が手を組んだ東洋街のブラックフライデー

サンパウロ市パウリスタ大通りの韓国文化院ではじまった「竹島は韓国の領土である」展示の様子

 「火は小さいうちに消せ!」「天気が良いうちに屋根を直せ」――これは人生においても、外交においても常に頭に置いておくべき金言ではないだろうか。
 サンパウロ市のパウリスタ大通りに今年できたばかりの韓国文化院で、最近「竹島は韓国の領土である」展示が始まった問題に関して、在サンパウロ総領事館が早々に対応して「撤去」を申し入れたことを高く評価したい。
 ただし、これで終わりではない。手を変え、品を変え、いろいろな手段で同じ趣旨のことを試してくるはずだ。その都度、それに対して「キチンと見ているゾ!」と毅然と対応することが今後も求められる。つまり、「火は小さいうちに消せ!」だ。
 ここで、ちょっとでもいい加減な対応をすると、「もっと過激化させていい」というシグナルを送ることになり、すぐに過激化する。気が付いたらもっとひどいものが、さらに目立つ場所に作られる可能性が高い。
 とはいえ、正直言ってこれは日本政府と韓国政府の問題であり、在伯コミュニティは関係ない。韓国系コミュニティと日系コミュニティはキチンと住み分けをしながら、ブラジルという一つ屋根の下で仲良く暮らしている。

リベルダーデ日本広場で行われたブラック・フライデーの様子(Foto Aldo Shiguti)

 事実、この週末に東洋街で開催された「ブラック・フライデー」は、リベルダーデ文化福祉協会(ACAL)主催とはいいながらも、実質は日系商店、中国系商店、韓国系商店、台湾系商店の合作といえるようなものだった。ACALの池崎博文会長も、「東洋街で一緒に商売をする者同士が協力し合って、みんなで東洋街を盛り上げる取り組みとして昨年から始まった」と言っている。
 今年は初めて東洋街にサンタクロースを登場させて、クリスマスツリーをリベルダーデ日本広場に初めて立てるなど、意欲的な年末の雰囲気づくりをしている。
 「令和開始」と「リベルダーデ区設立114年」を記念して200キロのケーキをカットして、その場で2千人に配るというイベントもとても良いアイデアだ。
 今月は今週末(7、8日)に東洋祭り、そしてナタウ(クリスマス)、最後の31日の午前中は「餅つき」、夜には大晦日となり、まさに大型のイベントや行事が続き、たくさんの客が東洋街に押し寄せる。

地域振興はお隣のイタリア人街に学べ!

ビッシーガのサンパウロ市誕生日ケーキのイベントの様子(Rovena Rosa/Agecia Brasil)

 お隣のベラ・ヴィスタ区イタリア人街ビッシーガ(Bixiga)地区では、1986年からサンパウロ市誕生日の1月25日に、年数に合わせた長さのケーキを作って、来場者にタダで配っている。今年1月25日にはサンパウロ市465周年だったから、465メートルのケーキを路上に並べて来場者に分けていた。
 このケーキはサンパウロ市の名物となり、今では「世界最大のケーキ」としてギネスブックにも登録されているという(catracalivre.com.br/agenda/bolo-do-bixiga-tradicao-resgatada-para-o-aniversario-de-sp/)。
 発案は、イタリア人移民で同地コミュニティの長老的リーダーだったアルマンジーニョ・プギリゼ(Armandinho Puglisi)だ。地区のケーキ屋が力を合わせて、サンパウロ市誕生日を祝うことで注目を集め、地区の集客力を上げようとした。
 今ではイタリア系と関係なく、地域住民がケーキを持ち寄って開催し、毎年メディアで大きく扱われている。
 11月末のブラック・フライデーから正月までの時期に、東洋街で立て続けにイベントをすることは地域活性化につながる。そのためにアジア系コミュニティはもちろん、ブラジル人商店主も力を合わせることは、とても理想的だ。
 県連日本祭りはあくまで日本文化を中心としたイベントだが、東洋街は地域に根付いた「ブラジルと東洋の懸け橋」的な場所になったほうが良い。

日本はロシア・韓国と仲良くすべき時期では

 日本国外務省にお願いしたいのは、大局を踏まえたうえでアジア外交をし、その構図をブラジルにも反映させてほしいという点だ。
 日本の国防・外交の中心軸は、軍事同盟を持つ米国以外にない。ぶれてはいけない。その米国が、新興・中国と「覇権争い」をしている。
 武力こそ使っていないが、すでに十分に「情報戦」といえる状態に発展していることをしっかりと認識すべきだ。本紙でも度々、転載しているメルマガ「ロシア政治経済ジャーナル」の北野幸伯氏が繰り返し主張している通りではないか。
 ならば、日本は米国をしっかりと支えて、この覇権戦争の「戦勝国」になるべきだ。米国のトランプ大統領が国内票ばかりを気にして、中東、欧州、中南米でも敵ばかりを増やす状況の中で、安部首相は日米同盟の味方を増やす努力を、トランプに変わってすべき立場にある。
 中国を世界から孤立させる戦略を進めるという方向性に立てば、日本はロシア、韓国、北朝鮮などを積極的に取り込むべきだろう。
 その大局にたてば、ロシアや韓国との領土問題は今「棚上げ」すべき時期にある。焦って解決する必要はない。まずは中国を孤立させるために、ロシアや韓国との友好を無理矢理にでも深め、貿易を増やす戦術をとるべきだ。つまり竹島も北方領土の問題も「棚上げ」すべき時期だ。
 「棚上げ」は譲歩ではない。今はその話をしないが、「しかるべき時期がくればしっかりと交渉する」ということだ。

米国の中国潰しは本気、日本も同調を!

 香港における人権尊重や民主主義確立を支援する「香港人権・民主主義法」は、トランプ米大統領の署名によって11月27日に成立した。
 米国では香港問題をテコにして、中国に揺さぶりをかけようとしている。この問題に関して、民主党と共和党は完全に手をとって共同歩調になっている。つまり、米国は挙国一致して打倒中国に進んでいる。米国は自国経済を犠牲にしてまで、中国による覇権争奪戦争に勝とうとしている。
 こんな時期に、習近平国家主席を来年春に日本へ国賓として呼ぶ話をすることは、米国への裏切りにみえる。香港人権法成立をきっかけに、この話を断るべきだ。
 実際に日本と中国との間には、尖閣諸島を始め、解決すべき懸案事項がやまほどある。それは「棚上げ」すべき時期ではない。それよりも、ロシアや韓国との関係を優先すべきだ。
 中国に対しては、その経済をどんどん減速させて不況になるように皆で包囲し、共産党の独裁政権が自滅的に崩壊するのを誘発するのが一番の得策だろう。万が一にも、近隣諸国に武力で暴発するような方向にいかないよう、しっかりと米国と日本は協調したほうが良い。
 日本の国会も「香港人権・民主主義法」にならった法律を作って、米国に同調してもいい。中国に国際的な外交圧力をかけるべき時期だ。

日伯の人的交流を深める王道政策を

11月13日、ブラジリアの外務省。習近平国家主席と固い握手をかわすボウソナロ大統領(Valter Campanato/Agencia Brasil)

 ブラジルは今年後半、すっかり中国に金で手なずけられた感がある。昨年の選挙時にあれほど反中国発言をして威勢が良かったボウソナロ大統領も、今回のBRICS会合ではすっかり習近平首席と意気投合した。昨年までのボウソナロ氏のトランプ愛的な発言は、すっかりなりをひそめた。
 最近、サンパウロ州のドリア州知事も「中国から投資がいくら来る」という狸の皮算用的な話ばかりしている。
 もちろんこの中国愛が、これがどこまで本気か分からない。おそらく「金の切れ目が縁の切れ目」だろう。中国の景気が悪くなれば、ブラジルからのラブ・コールはなりをひそめる。
 そんな時だからこそ、日本はブラジルとしっかりと人のつながりを深める王道的な政策を進めるべきだ。つまり、ビザの敷居を下げることだ。日本人がブラジルに短期滞在するにはノービザだが、ブラジル人が日本へ行くのにビザを取らなければならないという不平等な状況が長引くのは良くない。
 たとえば、来年の東京五輪期間を挟んだ半年間、試験的にブラジルをビザなし国に指定したらどうか。それで問題が起きなければ、再来年から本当にノービザにする。
 できれば、来年から日伯でワーキングホリデービザを開始してほしい。すでにアルゼンチン、チリは開始している。「一人あたりGDPの数字が足りない」という杓子定規な話は聞くが、王道的な日伯深化を模索すべき今、そんな細かい数字こそ棚上げすべきだ。

ブラジルのパスポート(Foto: Pedro Franca/Agencia Senado)

 30年前からのデカセギブームは二世、三世が高齢化して収束化してしまった。次の大きな人流を作るべき時期にきている。世界最大の日系社会が日本に関心を持たなくなったら、ブラジルにおける親日度は間違いなく低下する。
 だいたい四世ビザが失敗して実質的に頓挫している状況を、日本政府はどう考えているのか。
 日系人の貢献により、日伯関係が大変良好な今こそ、さらに人的な交流を深めるべきだ。これ勝る王道的な外交政策はない。しかも法律の文面を変えるだけで、大金がかかる訳ではない。
 ブラジルではよく「天気が良いうちに屋根を直せ」という。「大雨が降り始めてから雨漏りを直そうとすると、屋根に上って足を滑らせたり、ズブ濡れになったり大変になる。雨漏りは少しずつ悪化する。それなら、雨漏りが少なく、晴れている間に直しておけば簡単にできる」という意味だ。
 中国勢がブラジルに札束攻勢し、韓国勢はブラジルで「領土問題」を持ち出してくるのに対し、日本政府は100年後の日伯関係を俯瞰した王道政策で応えるべきだ。日本国外務省は今こそ本気で考えてほしい。(深)

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