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ストハラに国境なし

 「ゴストーザ」「ウマ・デリーシア」。当地には、一人で町を歩く若い女性にそんな言葉をかけるのは男の役目だ―とでも言わんばかりの〃文化〃がある。目配せや声をかける程度なら控え目な方で、なめ回すように観察したり、酒に酔った勢いでキスしようとしたり後をつけたりと、一歩間違えば犯罪に発展しかねない場合もある。文化的差異といえば聞こえは良いが、平たく言えば「欲望むきだし」の光景だ▼こうした路上での嫌がらせを「ストリート・ハラスメント」(以下ストハラ)と言い、最近、米国NYでその〃現場〃を撮影した映像が公開され波紋を呼んでいる▼反ハラスメント団体が女性にカジュアルな服装させて10時間ほど町を歩かせ、その様子を隠しカメラで撮影したもので、「美人だね」という単純な賛美はともかく、「笑えよ!」「ありがとうって言え」という悪質な野次や、無言で後を付けるストーカーまがいの行為に至るまで、ストハラのオンパレードだった▼純粋な褒め言葉なら素直に喜ぶブラジル人女性も多いだろうから、どこまでを「ストハラ」と呼ぶかは議論が分かれる所ではあるが、少なくとも日本人としては不快感を覚える人が多いのでは。主演した彼女本人が脅威を感じたという点も考慮すると、多くの先進国でも同じように不快で犯罪的な行為と受け取られているのだろう。この動画はネットでの公開後わずか1週間で3300万回以上も再生された▼当地では家庭内暴力も多ければ性犯罪も右肩上がり。「ストハラ」という概念がなければただの〃求愛行動〃という認識で終わるだろう日常の一コマに、この動画が一石を投じたと思いたい。ストハラに国境なし―。(阿)

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