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小説『パナマを越えて』開始=〃ある任務〃とは何か

 小説『パナマを越えて』の掲載を本日から始める。レジストロ地方百周年連載の中でも紹介された、元移住者・本間剛夫の謎めいた小説だ。
 「ある任務」とは何なのか――。戦前、海外興業株式会社が創立したエメボイ農事実習所を卒業し、レジストロで教師をしていた本間剛夫(在伯当時は小菅剛夫)は、〃ある任務〃を帯びて開戦直前に急きょ帰国した。
 1912年栃木県生まれで拓大予科出身の本間は、終戦直後に東京で出版した小説『望郷』(1951年、宝文館)の著者略歴に《昭和十六年、ある任務を帯びて帰国》と不思議な経歴を書いた。
 60年余り後の2005年、「小説」という形で本間はその真相を吐露した…。93歳の時に発表した小説『パナマを越えて』で長年口を噤んできた〝ある任務〟をテーマにした。最後の小説だから生涯最大の秘密を明らかにしたようだ。
 開戦間際の1941年、実際に本間はレジストロから出聖して南米銀行に勤めていた。人物名こそ変えているが、現実ほぼそのままの設定の中、小説『パナマを越えて』は始まる。
 軍需物資満載の貨物船の中でも、最も機密度が高い軍需品を肌身離さず持ち歩き、祖国に持ち帰ることが彼に課せられた特命だった。真珠湾攻撃直前、その貨物船が米軍厳重監視の緊迫した雰囲気のパナマ運河を越え、横浜港に辿り着くまでの過程を小説は描く――。
 もちろん「小説は小説」だ。でも「小説だから書ける真実」があることも否定できない。多少の脚色はあっても基本的には実話を元にしているようだ。その続編、『流離』『幻を追う男―ゲバラとの出会い―』も続けて掲載する。

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