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北東伯と「イスラム国」、どっちが怖い?

 8日付エスタード紙に恐ろしい図が掲載された。「人口10万人当たりの殺人発生率」(13年統計)を市別に示したもので、北東伯の海岸沿いに「100人以上」の棒線が〃城壁〃のようにズラリと並び、南に下りながら低くなり、リオ(39人)だと内陸部まで棒線地帯が広がり、壁でなく〃針のお城〃のようになる。ちなみにサンパウロ市は14人だ▼最悪の町は人口6千人のブレジョ・ドス・サントス市(ペルナンブッコ州)で204人(!)にもなる。でも人口6千人の町で一年間に204人も殺された訳ではない。実際は「13人」だが、これを10万人当たりに換算すると16倍になる▼同市は《泥棒すらいない》寒村なのに二つの家族が殺し合いを始め、20年間で100人が犠牲になった。まるで西部劇だ。発端は市中央の広場のバールで飲んでいたヴェラ家の3人の若者に、オリベイラ家の軍警が退散を命じたこと…▼一方「イスラム国」が「日本人殺戮」を宣言したことを受け、日本では不安が広がっているとの報道を見た。国別の殺人発生率でブラジルは25・2人(12年、世界18位)、日本は0・3人で218カ国地域の中で下から3番目。「イスラム国」包囲連合の国はみな同じ危険にさらされているし、テロが起きて日本人がもう数人亡くなったところで、まだまだ安全な方だ▼それに後藤健二さんはテロ被害者のジャーナリストとして歴史に残ったが、当地の日常的な殺人犠牲者は数日でニュースから消える。どちらが「死に方」として価値が高いのか▼むやみにテロを怖がって普段と違う政策を支持したりするのは、逆に危険。大事なのは〃冷静〃に怖がることだ。(深)

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