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竜巻被災地の真の英雄

27日に被災地を訪問したジウマ大統領(Roberto Stuckert Filho/PR)

27日に被災地を訪問したジウマ大統領(Roberto Stuckert Filho/PR)

 27日朝、ジウマ大統領がサンタカタリーナ州シャンセレー市を訪れ、竜巻で崩れた体育館の下敷きになったが助かった人々と言葉を交わした▼20日午後、同市を襲った竜巻は町の3分の1を破壊し、死者2人、負傷者120人といった被害を出した。26日付エスタード紙掲載の、アルシマール・スチルさん(33)が8歳のガブリエル君を救うため、わが身で息子の体を覆ったまま事切れているのを発見した軍警の話に涙を禁じえなかった▼いつも通り巡回に向かおうとした3人の軍警は通報を受け、スチルさん宅があった場所に急行。3軒の家は跡形もなく、瓦礫の中からはガスボンベが爆発する音も聞こえるという状況下、危険を顧みず救出作業に取り掛かった軍警達は、スチルさんの体に覆われたガブリエル君と妹のアナちゃん(5カ月)を見出した。全身ずぶ濡れで気管も詰まり、唇の色が紫に変わっていたアナちゃんに人工呼吸を施した軍警の一人は、別の軍警にアナちゃんを委ねてハンドルを握ると必死になってアクセルを踏み続けた▼病院への途上でアナちゃんの泣き声を聞いた件の軍警は2歳女児の父親で、「あの時ほど子供の泣き声を聞いて嬉しく思った事はない」と述懐。絶え間なく名前を呼び続ける仲間の声で、ガブリエル君も病院に着く前に意識を取り戻したため、二人とも意識のある状態で医師の手に託す事が出来たという▼スチルさんの遺族にとり軍警達は子供達の命の恩人だが、本人達は首の骨が折れて即死したスチルさんの最後の願いを受け止めただけで「本当の英雄はスチルさんに他ならない」とした上で、1日も早い子供達の回復を待ち望んでいる。(み)

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