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ガウショ物語=(44)=ファラッポスの決闘=《1》=祖国のために生き、死ぬ

 わしがベント・ゴンサルヴェス将軍の伝令だったことは何度も話したな――もちろん、証拠だってかあるさ。
 これから話すことは一八四二年の終わりごろ、アレグレッテで始まって、それから二年の後、国境のサンタナに近いサランジの辺りまで広がって、二月二七日に終った戦の時に起こったことだ。
 ことの起こりはこんな具合だった。まあ、お前さんによくわかるように、こと細かく話してやらんといかんな。一八四二年の八月、リオ・グランデ共和国の大統領だったゴンサルヴェス将軍は――おっと、すまんな……年寄りなもんで。
 ファラッポス共和国のことを話す時は、今でも帽子をとらなきゃ気がすまんのだ!……将軍は選挙のための文書、つまり「法令」を作って、代議員達を選ぶための大がかりな選挙を準備していた。この選ばれたお歴々が新しい法律を作ったり、戦争のせいで後まわしになっている、いろんな事柄を解決したりするというわけだ。
 九月には選挙があった。そして、十月には当選者たちが出揃った。そのほとんどが内陸の丘陵地帯を跋扈して勇名を馳せていた男達だった。政府の新聞は当選者の名簿と得票数を発表した。昔はすっかり覚えていたんだが、今ではもう忘れてしまったな。
 そう言えば、その新聞は「アメリカーノ」という名前で、一面にはいつもこんな詩が載っていた。これは覚えとるがね。

祖国のために生き、祖国のために死ぬ。
理のない独裁政治には、戦いを挑め、
善を推し進め、悪を滅ぼそう。
これぞ、自由なアメリカの民の務めなのだ。

 一一月になると、三六人の代議員のうち二二人が議会に集まってきた。一二月一日には大がかりな就任式が行われた。
将軍は大臣達、軍隊の司令官、その他の勇ましい面々と共に大統領として出席し、慎重なゆっくりした調子で演説をした。一同は静かにそれに耳を傾け、将軍が原稿を読んでいるのと調子を合わせるように、何度も頷いていた。
 ん?……何だって?……もちろん、全員が正装していたさ。真新しい軍服に磨きあげたサーベルの鞘、黄色いボタンのついた緑や青の外套の兵士達、威厳ある法衣姿の神父たち、その壮麗なことといったら!そして家族連れ、たくさんの美しい娘達、そして音楽までもな。わしともう一人の従卒は真赤な外套姿に晴れがましく誇らしい気持ちでいっぱいだった。
 同じ頃、ウルグアイでは、実権を握りたがっていたオリーベとリヴェーラの間で争いが起こっていた。ことあるごとにこの二人の一派は衝突し、小競り合いを起こしていた。
 ああ! あの頃のカステリアーノの奴らといったら……長い髪を振り乱してなあ。勇ましいもんだった!
 しかし、とにかくな、わしらは寄ると触るとそんな調子で奴らとはうまくやっていた。それが上からのお達しだったしな。
 わしらは食べるものに困ると馬に乗って、国境を越えて出かけて行ったもんさ。そこでシュラスコをしたり、若馬狩りをして、それから意気揚々と引き上げてきたもんさ。
 カラムル(政府軍)の最高司令官のカシアス男爵は、こうしたガウショたちに手を焼いていた。
しかしオリーベもリヴェーラも、わしらに対して卑怯な真似をしていたのと同じように、時期を見計らっては政府軍も騙したのさ。時にわしらに対して縄を締め上げ、やつらに対しては緩めるって寸法さ……。
 お前さん、わかるかい?……二枚舌ってやつさ!……
 だがな、もう少し聞いてくれ。
 女というやつは、いつだって男にとっての泣き所さ……。
 これから話す件で、女が魔術をつかって誰かに取りついたなんて思うなよ。そんなもんじゃない、もっと悪賢い手を使ったんだ。
 あの一八四二年の一一月、アレグレッテ村での集会に代議員達が共和国の各地方からぼちぼち集まってきていて、村には随行員やら騎馬の警備隊なんかが動き回っていた。そこにある日の夕暮れ、立派な牛が引く、しっかりと幌のかかった荷車が、肥えた牛の群れや厳重に武装した護衛を引き連れてやってきた。
(つづく)

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