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農業と格闘する移民の姿

ラーモス移住地50周年誌『絆』

ラーモス移住地50周年誌『絆』

 1964年入植のサンタカタリーナ州ラーモス移住地は43家族(約130人)と小粒ながら、味わい深い歴史を持つ。例えば「リンゴといえばサンジョアキン(以下サンジョ)」と誰もが思うが、実はその原木はラーモスにある▼今月刊行された同地50周年誌『絆』によれば、68年に長野県から持ってこられ、小川和己農園に植樹された「ふじ種」の原木が現存する。《この苗が親木になって、後にブラジルの市場を席捲するリンゴ〃ふじ種〃となって輸入国から自給国へと発展していく》(42頁)。でも成功一直線ではない▼ラーモスから60キロ離れたドイツ人移住地フライブルゴはリンゴの里として実績がある。そこで使っている種類を台木にし、「ふじ」を高接ぎした。日本製へのこだわりだ。でもそれが祟ったか5、6年目のリンゴ樹に根腐れ病が流行り、収量減で採算に苦しみ広まらなかった▼それ以前、初期の基幹作物ネクタリーナは65年に苗木が各農家に無償配布され、69年に初出荷。初の国産品とあってサンパウロ市市場で一個1ドル以上の高値を呼び、入植者はテレビなど家電品を競って購入したとか。ところが入植10年目の74年、暴風雨で枝が傷付き再生不能となり絶滅…▼ラーモス指導のためにJICAは71年、近隣のヴィデイラ農業試験場にリンゴ博士後沢憲志さんを派遣した。前述の経緯もあり、コチア産組が74年にサンジョにリンゴ団地造成を始めた時、後沢博士が呼ばれ、ラーモスで育てられた苗木が植えられた。まるでラーモスが〃台木〃になってサンジョが〃高接ぎ〃されたかようだ。歴史を残すことの重要性を実感させる一冊だ。(深)

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