供給過剰と、世界最大の消費国である中国の需要の低下も相まって、8日、鉄鉱石の国際価格は09年以来の低水準に落ち込んだと9日付エスタード紙が報じた。
鉄鉱石の価格低下と、ミナス州マリアナ市で先月5日に発生したサマルコ社鉱滓ダムの堤防決壊事故の影響で、製鉄、鉄鉱石生産最大手のVale(ヴァーレ)社(以下V社)の株価も大幅に下落している。
中国の貿易収支が赤字転落との報道後、8日の中国天津港での鉄鉱石価格は1トンあたり38・80ドルまで低下した。これで、世界中で、鉄鉱石会社、製鉄会社の株価が軒並み下落した。
Bovespa(サンパウロ市証券市場)では、V社の株価が議決権付で4・59%、議決権無しで5・28%下落した他、他の製鉄会社3社の株も軒並み値を下げた。
鉄鉱石価格とV社の株価が共に最高値を記録していた11年1月と比較すると、V社時価総額は概算3028億レアルから概算554・5億レアルに下がった。この間の鉄鉱石価格も、11年2月はトンあたり191・70ドルだったが、現在は約5分の1の38・80ドルとなっている。
鉄鉱石価格がトンあたり40レアルを割り込む事態に際し、各鉄鉱石生産会社も従業員の人員整理に踏み切り始めた。8日、アングロアメリカン社は、8万5千人に及ぶ人員整理、資産売却、株式配当金の凍結を発表した。リオ・チント社も、今後2年で設備投資を15億レアル削減する事を発表した。
投資情報ブログ〃WhatsCall〃の経済分析員ペドロ・ガルジ氏は「V社は『完全なる嵐』の中にいる」と評価。その他の分析員達も「鉄鉱石価格がトンあたり30ドルになったら、採算割れを起こしてしまうため、鉄鉱石生産会社には脅威だ」とした。V社は既に経費削減、資産売却を行っている。
国際価格の低下は原油でも起きている。14年半ばまで1バレル100ドルを超えていた原油価格は、世界規模の景気低迷によって需要が緩み、8日のニューヨーク市場では、一時1バレル36ドル台にまで下がった。新興国の通貨やコモディティ関連企業の株価にも下げの圧力となる原油安は、まだ長引くと見られており、ペトロブラスを要するブラジルなど、減速している新興国の景気を一段と冷やしかねない。