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「ある日曜日」(Um Dia de Domingo)=エマヌエル賛徒(Emanuel Santo)=(2)

 私生活のほうは、素性の知れない私を理解し受け入れてくれた女性とめぐり会って結婚し、ようやく家族としての幸せを手に入れた。南米では、日本人移民(私)とヨーロッパ系移民(妻)の間にできた息子にも、自動的に生まれた国の国籍が与えられたため、両親と子供の国籍がばらばらになったが、移民社会である南米ではよくある話だ。息子はいじめにあうこともなく、幼い頃から白い子や黒い子に混じって遊んだおかげで、誰にも偏見をもたない思いやりのある人間に育ってくれた。
 そんな人生を送っていた私だが、社会人として一人前になった息子が米国に行ってしまったのを機会に、ビジネスの世界から手を引くことにした。私はその頃になってようやく、自分が本当に求めていたものは富や名声ではなく、愛する人間と静かに過ごせる時間と空間だということに気付いたからだ。
 ところが、南米の各地に作った宝石店舗をユダヤ系の商人に売り払い、ようやく妻と共に余生を過ごす場所を探そうとした時、私の人生に再び試練が訪れた。彼女がガンに侵されていることが分かり、余命わずかと診断されたのだ。
 もうこれ以上治療のしようがなくなった時、妻は病院を退院して、あの世に旅立つまでの数週間を私と共に自宅で過ごした。
 その頃二人で交わした会話といえば、「今日はいい天気だね」とか「お昼は何を食べようか」とか、たわいのないものだった。孤児として育った私は、家族を失うことの意味がよく分からなかったが、妻を亡くして初めて、いつもそばにいてくれて何気ない会話をしてくれるパートナーの存在が、自分にとっていかに大切だったかということに気づいた。
 「自分は妻が愛してくれた以上に、彼女を愛してあげただろうか」と後悔した時には、愛情のお返しをすべき相手は、もうこの世にいなかった。
 息子は親元を離れ、愛する妻に先立たれ、再び一人になった私は、昔とはずいぶん変わったらしい「祖国」の日本をもう一度見たくなって帰国した。南米で大もうけしたおかげで、帰国後は食うに困らない。つまり私は、南米移住で成功して帰国した数少ない「日本人」の一人だ。
 今は、私が所有している東京・青山のマンションビルの一階の片隅に住んでいる。
 東京の一等地と言われるところでは、狭い土地にビルを建て、中に小さな部屋をいくつも作って店子を入れれば、毎月の家賃収入だけで南米の平均的サラリーマンの年収の何年分も稼げるから驚きだ。
 マンションの経営管理はすべて不動産業者に委託しているため、暇な私は、日本に滞在する日系人向け新聞の編集を手伝うかたわら、少しでも人様の役に立てればと、日本で生活する「外人」のよろず相談を引き受ける「トドス・アミーゴス(みんな友達)」という会の代表を務めている。会といっても、私の自宅にある事務所にいるのは私一人で、あとは会の趣旨に賛同する仲間がボランティアとして活動に参加している。
 手元の辞書によると、「外人」とは日本国籍をもたない外国人をさすという。ところが、「外人」という言葉は、実際には辞書の定義どおりに使われていない。なぜなら、日本の社会では、私みたいに日本の国籍をもっていても、顔付きや態度が変わっている人間は「外人」と呼ばれるからだ。
 経済発展によって日本はずいぶん変わったけれど、この国で「外人」というレッテルを貼られて生きていくのは昔も今も楽じゃないみたいだ。今日も「外人」と呼ばれながら生きている男が相談にやって来た。

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