●姿勢が全ての基礎
姿勢は健康の基礎です。どんな美貌やプロポーション(体型)であっても、猫背だったら台無しです。お国柄や文化の違いで審美的な基準は変わりますが、姿勢に対する評価基準は万国共通と言えます。
見た目の問題だけではなく、姿勢が悪いと筋骨格系器、呼吸循環器系、消化器系の機能を低下させて、様々な不調をきたす原因となります。
多くの人が気にしている姿勢ですが、「姿勢のガイドライン」なるものが普及していないため、「姿勢の基準」を理解している人は少数しかいません。
●赤ちゃんの姿勢と動作がお手本
近年、進歩的な運動療法の指導者たちの間では、赤ちゃんや幼児の発達過程における姿勢と動作パターンが注目されています。欧米諸国で開催されるトレーナー向けのセミナーでは、「プライマルムーヴメント」と称して、赤ちゃんや幼児の動作パターンをプログラムに取り入れている団体が増えています。
赤ちゃんや幼児の体格は、ほぼ4頭身です。大人に比べて筋力が劣っているにも関わらず、座ったり、しゃがんだり、歩いたり、自由に動き回れるのはなぜでしょう。
その答えは、背骨がS字にちかい形状を維持していて、頭部を胴体の真上にキープ(保持)させているからです。この状態をニュートラルスパインと呼びます。
ニュートラルスパインになっているときは、背骨が頭部と上半身の重さを受け止めてくれるため、首や腰の組織に掛かる負担が最小になり、肩こりや腰痛を根本から改善します。
大人が赤ちゃんや幼児の動作を真似て、ハイハイやローリング(横揺れ)の練習をするのは抵抗があるかも知れませんが、機能的で痛みのないコンディション(体調)を維持していくためには、彼らの姿勢と動作パターンを再学習する必要があるのです。
●棒で姿勢を知って壁で整える
理想的な姿勢は、棒と壁で獲得できます。
【姿勢のチェック】
自分の姿勢をチェックするには、1メートルくらいの棒を背中に当ててもらうとよいでしょう。尻の割れ目―背中―後頭部の3点が棒につき、腰と棒の間に手のひら一つがギリギリ入るのが、理想のニュートラルスパインです。
尻の割れ目だけが棒についたら、「前のめり姿勢」になっています。背中だけが棒についたら、「スウェイバック」と呼ばれる不良姿勢です。
【姿勢を整える】
姿勢を整えるには、壁の角に「尻の割れ目」―「背中」―「後頭部」がつくように立ちます。(壁の角から半歩離れて立つ)これで「ニュートラルポスチャー」の出来上がりです。
日に2?3回、角に背骨をつけて姿勢を整えていると、脳に新しい姿勢がインプット(入力)されて定着するので、是非ともルーティーンワーク(日常動作)に取り入れて下さいね。ニュートラルスパインを維持するコツには、立っても座ってもスプリット・スタンスにしておくことです。
【プロフィール】
伊藤和磨(いとうかずま)1976年7月11日生まれ 東京都出身
メ ディカルトレーナー。米国C.H.E.K institute 公認practitioner。2002年に「腰痛改善スタジオMaro’s」を開業。『腰痛はアタマで治す』(集英社)、『アゴを引けば体が変わる』 (光文社)など14冊を出版している。「生涯、腰痛にならない姿勢と体の使い方」を企業や学校などで講演している。