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なくならぬ人種差別や同性愛者への憎悪

 4日朝、ニュースを聞いていた長女が、リオ連邦大学で黒人で同性愛者の学生が殺害されたとの報道に唖然とした顔を見せた▼頭などを殴られ、下半身裸という変死体が大学に近いグアナバラ湾で見つかったのは2日夜だ。学生はパラー州出身で、上背もあり、柔道やカンフーの心得もある。同日も練習のために寮を出たきり消息を絶っていた。警察や友人は複数の人物が学生を羽交い絞めにした上で暴行したと見ている▼同校では、黒人や同性愛者、特別枠入学者など、複数の条件に当たる学生に対する脅迫が頻繁にあり、学生はこれらの条件の内三つを満たしていた。また、同校の警備員が構内で起きた暴行事件で適切な対応を怠り、被害者を嘲ったりした事件を告発しており、身の危険を感じたのか、親戚に寮を出るための金の工面を頼んだ事があったという▼同校は公立校出身者や黒人への特別枠をいち早く採用した大学だが、事件の数日前には特別枠で入学した学生への脅迫が再びあったという。学生寮居住者達は常に治安の悪さを口にしていたといい、警察は3日夜、今回の事件は黒人や同性愛者らへの憎悪が引き金となったものである可能性が強いとの見解を表明した▼この手の事件が起きる度に思うのは、ブラジルの文化の豊かさは様々な人種や様々な背景を持つ人々が集まった国故に生じたものである事や、ブラジルは世界でも最大規模のゲイパレードが行われている国だという事実だ。本来なら、人種や出自の違いを真っ先に認める事の出来るはずの国で悲しい事件が起きた直後、米国で再び、白人警官が黒人を殺害する事件が起き、国内外で抗議の声が上がっているとの報道が流れてきた。(み)

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