テメル氏がパリ協定批准=気温上昇2℃以下を目指し=経済・開発の新しい指針に

テメル大統領は12日、気候変動を抑制し、2100年までの気温上昇を2度以下に食い止めることを目標とするパリ協定を批准した。ブラジルは温室効果ガス排出大国では米国、中国に次ぐ三番目、世界中では28番目の批准表明国となった。13日付エスタード紙が報じた。
テメル大統領は批准式で、「同協定批准は政府間の問題ではなく、国家の問題だ」と語った。大統領は、環境、開発に関する国際連合会議のリオ92とリオ+20についても言及し、米国で行われる国連総会に承認書類を持っていくことの大切さも強調した。また、サルネイ・フィーリョ環境相は気候変動に関する対策の緊急性を訴え、年末までにブラジルの目標を実践するための計画を発表することを示唆した。
これに対し、一般の社会団体代表として出席した「オブセルヴァトリオ・ド・クリマ」事務局長のカルロス・リッチウ氏は、ブラジルでは未だに石炭による発電所建設を計画し、原油価格の上昇に期待していること、海洋公園の保護規定緩和を求めていることなど、気候変動抑制に逆行する政策があると指摘した。
持続可能な開発のためのブラジル企業協議会のマリア・グロッシ議長は「気候変動への対処を国の開発政策の戦略的柱とし、経済政策や財政調整案も温室効果ガスの排出削減を見据えたものとするべき」と強調。「パリ協定批准によってブラジルが二酸化炭素削減交渉に応じる姿勢を示したことは、経済の目指す方向変換を示唆する新しいサインだ」と語った。
ブラジルは、2030年の二酸化炭素排出量を11億6千万トンに削減することを目標としている。これは05年の20億400トンを25年までに37%減らした上、30年には43%まで落とすというものだ。また、30年には法定アマゾンの不法伐採を撲滅、1200万ヘクタールの植樹などを目標としている。
気候変動の影響はブラジルの干ばつや、日本の大型台風などの異常気候にも表れている。8月末に東北地方の太平洋側に上陸して甚大な被害を残した台風10号や、北海道を襲った台風7号や11号も気候変動の産物だ。8月中旬の日本近海の海水温度は例年より1~5度高い所が多く、台風10号の経路はそこに重なっていたとされている。
また、世界銀行とワシントン大学健康指標評価研究所(IHME)の合同調査によると、大気汚染による全世界の死者は290万人、年間損失額は2250億米ドルに及ぶ。ブラジルでの死者は6万2200人とされ、損失額は49億米ドルだ。車の排気ガスなどの大気汚染物質増加は、温室効果や気候変動にも繋がる。