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佛立聖地に本格的日本庭園=若手精鋭技師が初来伯=「京都を感じる庭園に」

北澤さん、吉川さん

北澤さん、吉川さん

 2015年9~11月に日本で開催された「神戸ビエンナーレ2015」のグリーンアート部門で、世界各地から参加したプロ約60人から大賞に選ばれた北澤真さん(29、京都)=京都府在住=が23日に来社した。15日に来伯して以来29日まで、サンパウロ州タピライ市にある本門佛立宗「佛立聖地」の庭造りをしている。
 伝統ある北澤造園3代目庭師の北澤さんが大賞に選ばれた作品「鳴滝」は、京都貴船の川床からアイデアを得た。緑に囲まれた座敷に設置されたテーブルの上に川を流すという涼しげな作品だ。
 「鳴滝」は1月18日に京都佛立ミュージアムに贈呈、入り口に設置された。4月に同ミュージアムを訪れたコレイア教伯ブラジル教区長が作品を気に入り、北澤さんに連絡、依頼した。
 実際に作業に取り掛かるまでは、木や石を買う場所、日本の土や木との質の違いなど「思うように表現ができるか」という不安はあった。だが、始めてみると「意外といける!」と好感触だったという。「こちらの木や石でも日本の庭を表現しできると分かった。制作を始めたら、もう不安は感じなかった」。
 与えられた制作期間は2週間。素材購入などの準備もあり、実際の制作は10日ほど。本人の中では「まだ完成とは言い切れない」そうだ。
 「完成前、後で作品の空気が変わり、見た人に与える影響が良いものか悪いものかが感じられるが、まだそこまでいっていない。どうにか29日までに平和の鐘周辺だけでも完成させたい」と語った。再び招聘されるかは、コレイア教伯教区長の反応次第だ。
 佛立宗の仏それぞれをイメージし、平和の鐘周辺に大きな石を17個置いた。自然と人の生活の繋がりなど、佛立宗の解釈を意識した。
 「これから、木や石がその場の雰囲気を変えるために成長していく。日本や京都を感じるものを目指し作った」と語った。制作中の庭園にブラジル的要素を入れたかと聞くと、「自分は『日本庭園』を造りに、『日本人庭師』として来た」ときっぱり言い切った。
 外国での庭造りは今回が初めて。ブラジルの感想を聞くと「人が良く、面白い国。制作も8~10人のお坊さんが手伝ってくれた」と好印象。「様々な環境下での庭造りは自分への挑戦でもある。他国や変わった場所などで制作をしたい。もちろん、佛立聖地の制作も続けたい」と意気込んだ。
 北澤さんは中学生の頃から父・北澤佳明氏の仕事を手伝い始めた。立命館大学理工学部都市システム工学科を卒業後、22歳から庭師の仕事を本格的に始め、全国各地で造園に携わっている。


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 庭師の北澤さんとともに来社していた吉川卓志さんによると、「佛立聖地は面積が88アルケールで、日本庭園を造るのに十分なスペースがある」そう。今回は平和の鐘付近のみの造園となったが、これから庭園が広がっていけば「新名所」になるかも。ブラジルに日本庭園はすでに幾つもあるが、「日本の有名な庭師が作った」ものはほとんどない。吉川さんも「出来上がりを楽しみにしている、平和の鐘の見栄えがさらに良いものになる」と喜んだ。

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