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年は明けたが、周囲は暗い=必ず良くなるブラジル経済=聖市在住 駒形秀雄

テメル大統領(Foto: Beto Barata/PR)

テメル大統領(Foto: Beto Barata/PR)

 雨の日が続きますね。そんな中でもうお正月、さあ、この1年はどんな暮らしになるものやら、と気になります。それでTVや新聞でニュースも見るのですが、ここ数日の天気と同じ、パッとする様な明るい話がありません。
 ブラジルへ来て50年を過ぎたと言う、松村某(なにがし)さんの話を聞いてみましょう。
 「俺は戦後の、まだ苦しい時期に日本を出た。出発前、郷里の親戚知人から『あんたはここに残る我々の希望の星だ、元気でな、ガンバレヨ』と言われ、希望に若い胸を膨らませて来た。そして、事情も分からぬこの地で、何とか自分の身を立てようと一生懸命働き、自分の楽は二の次、辛抱もした。お陰で今日、自分の住む家はあり、ここで教育を受けた子供達も一人前になり、それぞれ立派に所帯を持っている。さあ、俺はやるだけやった、身体も弱くなったし、後は少し楽をして穏やかに晩年暮らそうか、と思って居たんだ。ところがどうだ、頼りの綱の年金は『目減り』があって年々使い手がなくなる。世間は不況とかで周りは暗い。一体、今の不景気は、ブラジルはこの先どうなるのか?」
 「日本では『ブラジルは不景気で大変だそうだ。町には失業者がいっぱいで泥棒が増えてる。その泥棒を入れる刑務所も超満員で、囚人が暴動、脱走、収拾もつかず大騒ぎだそうだ』こんなニュースが流されて居る。これじゃ同じブラジルに住むこっちも肩身が狭い、友人知人には格好悪くて、郷里にも帰れんわ」
 「一体これからブラジルはどうなるんだろう? このまま沈んで又元の後進国に後戻りか。何とか以前のように『貧しくとも明日に希望を託せる国』にはならないのか。あんた経済に詳しそうだから、教えてくれよ」
 〃日出る国〃日本を自ら出て、このブラジルへ渡って来た松村さんの判断は正しかったのかどうか、これは中々深刻な問題ですが、皆様と一緒に考えてみましょう。

この国経済の実情は

 ブラジル経済の状況は皆様が感じて居られる通りです。一言で言えば良くありません。別表でも分かる通り、経済は2014年頃から悪化し、2015年、2016年と国内総生産(GDP)が対前年比でマイナス3・8%からマイナス3・6%と縮小しているのです。
 本来、ブラジルのような発展途上国は人口も増えてるのですから、前の年に較べて少しでもプラス(発展)の数字が出ないとならないのです。同じBRICS仲間と言われたインドが今年予想で7・6%増、中国が6・5%増と言われ、相当のプラスを計上しているのに較べると、ブラジルの落ち込みが際立ちます。
 ブラジルの経済規模が縮小している分かり易い例は自動車の生産台数にも見られます。数年前には年間300万台以上も生産していたのに、去年の生産は200万台でした。30%もの落ち込みです。
 このように物を作っても売れなかった会社は採算を考えて、人員を減らします。去年(2016年)末のブラジル失業者数は1200万人です。
 一口に1200万人と言いますが、これは大変な数字です。
 隣のパラグアイ国二つ分の人数です。去年の失業者はその前の年(2015年)に較べて、300万人も増えています。収入が減れば、金を使わなくなる。店は物が売れない。困ります。
 失業者にはそれぞれ家族が居るわけですから、これは景気に、国の経済に大きな影響を齎すことは容易に理解出来ます。もしかして皆様の周囲にもこの様な話が出ているのじゃ無いですか。
 「悪い人間ばかりが得をする。俺らの様に真面目に一生懸命働く者が苦しむ。こんな国はもうダメだ。まともな国、日本へ行こう」、こう考える人が出るのも分かる気がしますね。

あまり悲観することもありません

輸出用の大豆(By Roosewelt Pinheiro/Abr, via Wikimedia Commons)

輸出用の大豆(By Roosewelt Pinheiro/Abr, via Wikimedia Commons)

 ブラジル経済の実情を述べてきたら、以上のように悪い面ばかりが表に出ました。
 が、実は昨年中には明るいポジティブな材料も現われています。鉄鉱石、大豆、原油などCOMMODITYと呼ばれる商品の価格/量が上昇したことです。
 鉄鉱石などは地面を掘れば要るだけ取れるので、この単価が上がれば生産者(ブラジル)は儲かります。この価格が最近50%ほど上昇し、それだけでブラジルは40億ドルほどの増収になります。
 大豆価格の値上がりはそれ程大きくはありませんが、今収穫期の生産量が前年比15%ほど上回り、この分で20億ドルほど増収が見込めます。
 いずれにしても、本年度ブラジルの輸出総額は約2千億ドル、対する輸入総額は1500億ドルで、差し引き500億ドルの黒字になると計算されています。良い話ですね。
 これらとは別に政府も経済振興、財務改善のために種々の対策を講じています。政府支出の抑制、金利の引き下げ、労働問題の合理化などなどです。
 このうちで1月10日、政府は大型金融に関する政策金利を0・75%引き下げて、年13%としました。国としてはこの世界一高い金利を今後とも段階的に引き下げ、本年末には10%前後にしたい意向です。金利が下がればお金は購買や設備投資に向かい、景気を上向かせる方、プラスに働きます。
 「天気は大雨や嵐の日もあるけど、それはいつかは止んで、また、おてんどさまだって出てくるでしょう。経済にも悪い時期もあれば、良くなる時期もあるんじゃないんですか」。なるほど、もっともな質問ですね。
 景気がそのように循環するものならば、今のこの国の不況はもう底(fundo do poco)をついたのか、もしそうなら何時から上昇してよい方へ向かうのか。
 いや、あるいはそうではなくて、今の底の状態がブラジルの実力で、この程度の不景気がまだまだ続くのでないか。期待の半面、不安は募ります。

2億人の元気が良い市場

 別の表でも分かる通り、今年、2017年の国内総生産は前年とほぼ同じで、大きな伸びは見込まれていません。
 ノーテンキな誰かが言っていたように「2017年が景気の転換点」はまだのようです。
 冷静に言うならば、今年もまだ「ジッと我慢のやせ蛙」のにおいがします。しかし、それまでの八方塞がりに較べて少し明るさが見えています。
 去年までのGDPのマイナス成長(縮小)から今年は僅かでもプラスに変わっていることです。井戸の底に届いたのかも知れません。
 庶民の敵「インフレ」も5%程度で納まりそうです。更に来年2018年になればこの成長にも弾みがついて上向きそう、成長率プラス2・3%と予測されているのです。
 「それほんとかね。今までも政府のおいしそうな話は沢山聞かされて来たが、その時(HORA H)が来たら話とは大違い、非実現だった。そうそう誤魔化されはしないぞ」そう松村さんは言います。
 しかし、この数値は政治家ではなく、経済専門家やブラデスコなど銀行の責任ある人が言明し、多くの企業家たちがその数値を基に経営計画などを策定しているのです。この時点では信頼できる数字と言えるでしょう。
 政府の経済振興策や金利引き下げも、実際にその効果が現われて来るまでに6カ月ほどは時間が必要です。アメリカには型破りのトランプ大統領も登場していますから、世界経済にも何らかの変化が出てくることが考えられます。
 このブラジルには2億人の元気の良い人たちが住んでいて、これが皆飯を食い、子供を育て、生活をしています。これは景気、不景気に関係なく起こることです。大きな市場といえます。
 更にブラジルには他国が真似出来ないような利点もあります。主食料、鉱物資源、広い耕作可能地などです。その上、地震もツナミもありません。誰かしっかりした「旗振り」(政治家)が現われて、うまい経営をやればこのブラジルが発展できない訳がないのです。

元気を出して前進

 こういうことは世界の各国もキチント見ていて、今までブラジルへの直接投資を引き揚げていません。逆に、世界の投資対象国の順位としては中国、米国、などについで今でも世界上位にランクされているのです。
 ここに居る人が過度に心配することはありません。経済は生き物でその中で活動する人達が皆ポジティブに考え、行動すれば、経済も良い方に向かって動き出します。
 この新聞をお読みの皆さん、優秀な日本人の血を引く皆さん、元気を出してガンバリましょう。
 ブラジルにはあなたの住む家があり、子や孫が成長して行く国なのです。 ( hhkomagata@gmail.com )

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