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日本の若者、ブラジルで何を得た?=交流協会の研修生体験記=第4回=こんなに刺激を受けた濃い1年は今までになかったな 佐藤桂一

佐藤桂一さん

佐藤桂一さん

佐藤桂一さん(大阪、28)。将来に悩めるブレイクダンサー。研修先は郵船ロジスティクス

 「俺の研修先。倉庫!!」って聞いた時は、「えー!マジかよ!」って気持ちやったかな。ちょっと期待外れやった。倉庫は裏の仕事やし、暗いイメージがあったから。「俺はこの1年で思いっきりダンスしたんねん!」そんな気持ちで参加した。結果的に自分が想像していたところまではダンスしきれんかったけど。
 でも1年を終えて今、本当に行って良かったと思ってる。こんなに刺激を受けた濃い1年は今までになかったな。ブラジルは俺の今までの価値観や常識をどんどん破壊していった。
 慣れるのには苦労した。どうやってブラジルの人達と付き合っていけばいいのか全然わからんかったから。感じたのは気持ちが大事やってこと。相手に自分の気持ちを見せて、口で伝えていくことかな。コミュニケーションは必須。常に外向きでいることは必要やな。
 俺の研修先の同僚は経済的に裕福じゃない人がほとんどやった。もっともこれがサンパウロでは多い階層だとは思うけど。同僚は地方から、上京してくる人が多い。職場の雰囲気は明るかったよ。みんなおしゃべりや冗談は欠かさない。すれ違うと常に冗談を飛ばす。初め俺はこれを好きやなかった。でも今は恋しいなあ。
 ポルトガル語でXingamentoっていう。相手を罵ること。これに絶対怒ったらあかん。でも知らんかった俺はかなりイライラしてた。いろんなXingamentoがあった。「日本人、中国人、韓国人。全部同じ! めっちゃ醜い!」これは同僚の〃鉄板技〃(常套句の意)やった。叩いたり、押したり、引っ張ったり、蹴ったりもよくされた。切れて、危うく同僚の指を折りかけたこともあったな。俺が機嫌を損ねた所で、同僚達は絶対止めないけどね。
 誰も口では説明して教えてくれんかった。ブラジル人はいつもコミュニケーションを大切にしてる。同僚達はそれを俺に教えようとしていた。今はそれが分かる。
 自分の事だけに内向きな俺やったけど、同僚達は俺を家によく招いてくれた。家を訪問することで同僚の辿ってきた人生とか日常が分かってくる。同僚のほとんどが自分で家を建ててた。10年、20年と時間を掛けて週末に建設作業をする。
 ブラジルでは仕事を終えてから、大学に通うことが多い。帰宅するのは深夜0時前とか。週末はもっぱら家族と過ごすから、親戚同士が集まる。ブラジルの人達は忙しい。それでも皆、俺の訪問を喜んでくれた。行く先々で色んな気持ちを受け取った。誕生日には3500円程する香水をプレゼントしてくれる人もおった。これは同僚の月収からするとすごい痛い金額だよ。
 俺と仕事することを本当に好んでくれた仲間もできた。彼とはいろんな話をしたね。仕事。家族のこと。女関係。家庭や社内の問題ごと。日本人とブラジル人の違い。Brincadeiraを教えてくれたのも彼やったな。Bricadeiraは遊びのこと。XingamentoもBrincadeiraの一種。Brincadeiraのおかげで帰国2カ月を目前にブラジル人の彼女ができた。
 独身の男がブラジルに行くんやったら、必ずブラジル人女性を捕まえなあかん。日本人女性とは違う。周りの人からの評価も変わってくる。
 ブラジルの人達はコミュニケーションを大切にしてるって言った。今の気持ちとか感情の確認をする頻度が物凄く多い。常に確認し合うことでお互いの関係や絆を研いでいく。本当に物凄い労力がいるよ。でも今はそれを惜しみたくはないかな。人といること。話すことが好きになってしまったし。
 人と通じ合うことは簡単じゃない。でも簡単なことから始めていくことはできる。しょうもないことでもいい。コミュニケーションを取ろうとすること、それを続けていくことでゆっくりと変わっていく。何もおっくうに思う必要なんかないんや。今は人との会話を楽しみたいと素直に思ってるよ。地球の裏側でこんなことに今更気づくなんて。

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