わだん太鼓アンサンブル(代表=青山明奈さん、淳さん)は、「ECOS DIVINOS―A Nova Era do Taiko(神の響き―太鼓の新時代)」公演を14日にサンパウロ市の州立セルジオ・カルドーゾ劇場で行い、大迫力の演奏、工夫をこらした演出に会場は大いに盛り上がった。80~100レアルの入場料をとる太鼓公演は非常に珍しいが、約300人が来場した。
目隠しをした7人がゆったりと円を描くように回りながら舞い、公演が始まった。それぞれが太鼓まではっていくと、太鼓をなで、腕やひじで軽くリズムを刻んだ。掛け声とともに本格的な太鼓の演奏が始まると、どんどん勢いを増していき、観客は一気に引き込まれた。
7人のメンバーにダンサーを加えた8人は、大小の太鼓や笛、チャッパなどの楽器を用い、メンバーを交代しながら、約1時間半の間、途切れることなく演奏を披露。息の合った演奏に舞踏も加わり、真剣だが笑顔で演奏する様子に観客も手拍子や歓声でこたえ、会場は終始熱気に包まれた。
このような見せ方は、あえて太鼓の専門家ではない演出家のシンチア・バストス氏が担当。緩急のある演奏とバラエティに富んだ楽器と奏法、動きで、観客を飽きさせることなく楽しませた。
最後の楽曲を終えた際には、観客総立ちで拍手と歓声を送り、しばらくやむことはなく会場一体でアンコールを呼びかけた。
公演中、特に会場の熱気を高めたのが、淳さん(二世)とシロト・ケイジ・トーマスさん(三世)による竹響(ちっきょう)の競演だ。
竹響は、台に置いた竹の筒を太鼓に見立てたもので、2人はおどける様子を見せながら、交互に技術を自慢し見せ付けるように叩いたり、竹響を取り合うように叩いたりして観客の笑いを誘った。だが、いったん2人が並んで競うように叩き始めると、竹の破片が飛び散るほどの力と、目にも止まらぬ手さばきに圧倒された観衆は興奮し、口笛や叫び声のような歓声を送った。
来場した丹下セツ子太鼓道場の生徒の西尾パウラさん(三世)は「言葉にならないくらい素晴らしかった。奏者の熱い真剣な気持ちが伝わってきた。太鼓の流派は違っても、心は通ずるのだと思った」と深い感動を覚えたよう。
日系社会歌手の谷川セルジオさん(二世)も「ダイナミックだった。響きと共にエネルギーを感じた。元気をもらった」と絶賛した。
終演後、ロビーで余韻に浸る来場者にあいさつをしていた淳さんは「観客に自分たちの響きが届いていれば嬉しい。観客も盛り上がってくれて、それがまた自分たちのエネルギーになった」と充実感に満ち溢れた笑顔を見せた。
19日には、午後7時半からサンパウロ州アララス市のマエストロ・フランシスコ・パウロ・ルッソ州立劇場(Av. Dona Renata, 4901 – Vila Pastorello)でも公演を行う。
チケットは前席80、その他60レ。学生、60歳以上の高齢者、または保存食1キロの持参で半額となる。購入はサイト(https://bileto.sympla.com.br/event/62563)または会場まで。当日会場での購入も可能。
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14日のわだん太鼓アンサンブルの公演に来ていた日本語教師の横溝みえさん(愛知県出身)は、サンパウロ州アチバイア市でメンバーから太鼓を教わっているそう。公演に満足したようだが「練習のときは彼らの演奏をもっと近くで見られるから、公演よりもっと迫力があってすごいの」という。耳子には十分な迫力と圧巻のパフォーマンスだったが、生徒が見ているのはそれ以上?!