《ブラジル》最高裁と大統領の対立激化=大統領派政治家の口座開示命令=ボルソナロ反発「司法権限に制限を」

最高裁のアレシャンドレ・デ・モラエス判事は16日、反民主主義的行為を行った容疑者への家宅捜索に続き、ダニエル・シルヴェイラ氏やカルラ・ザンベッリ氏など、かねてから大統領派として知られる11人の政治家の口座情報の開示を命じた。身内が次々と捜査の対象にされることに怒りを隠せない大統領は、司法の捜査権限を制限することを望み、「今こそ法的規制が必要だ」と発言し、物議を醸している。16、17日付現地サイトが報じている。
口座公開の対象となったのは、下議10人、上議1人の計11人。そのほとんどが、大統領が以前所属していた社会自由党(PSL)党員で、大統領が開設する予定の新党「ブラジル同盟」への移籍が予想される議員たちだ。
内訳は、下議が「反民主主義行為」で家宅捜査にもあったダニエル・シルヴェイラ氏を筆頭に、カボ・ジュニオ・ド・アマラル氏、カルラ・ザンべッリ氏、カロリネ・デ・トニ氏、アレー・シウヴァ氏、ビア・キシス氏、ジェネラル・ジラン氏、ギガ・ペイショット氏、アリネ・スレイチェス氏(以上PSL)、オトニ・デ・パウラ氏(キリスト教社会党・PSC)。上議はアロウデ・デ・オリヴェイラ氏(社会民主党・PSD)だ。
銀行口座の情報開示は連邦検察庁が要請したもので、5月27日にモラエス判事が許可を出していた。目的は反民主主義的デモの資金源を探るためで、1983年制定の国家保安法に則る、国の安全に危害を与える勢力に対する金銭授受行為の有無の確認にあたる。
同日午前中には、3月から断続的に起きている「反連邦議会・反最高裁デモ」を煽ったとして、「ブラジル同盟」の出資者やデモを積極的に呼びかけたユーチューバー、サイト運営者たちを対象とする家宅捜索が行われた。デモ参加者らはモラエス判事の自宅前でもデモや脅迫行為を行っており、逮捕者も出ていた。
13日夜にはネオナチ集団「300・ド・ブラジル」が、大統領府前での武器を持っての野営を強制撤収させられた腹いせに、最高裁に向かって花火を発射。15日には首謀者のサラ・ウインター容疑者が逮捕されている。ただし、13日のキャンプ撤去は、最高裁ではなく、連邦直轄区政府が命じたものだった。
身内が次々と捜査を受けていることに、ボルソナロ大統領は業を煮やしている。大統領は最高裁の行為を「権力濫用」と見なし、16日夜、SNSを通じて、「権限に制限が定める必要がある」との持論を展開した。大統領の近親者たちへの捜査は、5月27日に行われたフェイクニュース捜査以来、激化している。ボルソナロ氏はこの日、米国やイスラエル、ハンガリー、インド、日本など、世界132の国々が署名した「フェイクニュース撲滅」キャンペーンへの署名を拒否している。
最高裁は17日も、FN捜査の継続を問う判事投票の続きを行っているが、かねてから「継続派」が優勢と伝えられている上に、同日14時の時点で3人が賛成。反対者は出ていない。