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キノコ雑考=ブラジルに於けるキノコ栽培の史実とその背景=元JAIDO及びJICA 農水産専門家 野澤 弘司 (7)

 近年の特筆すべきは、2008年にプリンストン大学の下村脩教授がオワンクラゲとキノコの発光体から、緑色蛍光蛋白質(GFP)を発見し、生物体内で発光させる事により生理学的現象を追跡するメカニズムを開発しノーベル化学賞を受賞しました。これよりガン細胞の転移及び増殖の状況が容易に確認でき、また糖尿病では膵臓の細胞がどの様に血糖値を下げているかが解るとの事です。
 更に下村教授の“花も実もないキノコから発光する仕組みの秘密を解明する事は、生命の神秘を探る錬金術として偉大な発見となり人類に利益をもたらす”との含蓄ある提言は、キノコ研究者に檄を飛ばし抱負を新たにしました。
 更に2015年にノーベル生理学.医学賞を受賞した北里大学の大村智教授は、一匙の土にはキノコの菌糸等約1億個の微生物が生息している事から、出張の度に各地で採取した土壌を持ち帰るビニール袋を携行するなど、ここ掘れワンワンのお宝探しを続けた結果、1974年には静岡県伊東市の川奈ゴルフ場近くで採取した土から新種の放線菌(Actinomycete、キノコ同様、土に生息する細胞が菌糸を形成しカビの如く放射状に増殖し生育分岐を繰り返すバクテリア)の一種でイヴェルメクチンの原料となるエヴァメクチンを分離しました。
 これより花咲爺の逸話を地でいくかの様に抗ウイルス活性、抗炎症作用、家畜の寄生虫駆除、そしてアフリカや中南米では年間数10万人が失明するオンコセルカ症の治癒薬のイヴェルメクチンを創薬しノーベル賞を受賞しました。
 斯様に医薬学界での相次ぐ受賞者がいずれもキノコ関連の研究成果による偉業である事は誠に意義深いものであります。更にはイヴェルメクチンはこれだけの薬効に留まらず、ウイルスが人間の体内で増殖するには人間の細胞核に入り込まなければならないが、細胞内には核膜を通してウイルスを運び込む蛋白質が存在するので、イヴェルメクチンはその蛋白質と結合してウイルスが核の中への侵入を邪魔する特性を発見し、Covid-19に対するイヴェルメクチンの臨床効果が確認されました。
 日本政府もイヴェルメクチンの効果を認め都道府県の保健所に使用許可を通達しました。土壌に棲むキノコの菌糸や細菌が人類を救う薬剤として日米の化学者が創薬した事は歴史に残る快挙でした。しかしWHOを始め一部の医療関係者はイヴェルメクチンのCovid-19に対する臨床効果の確認や関連する論文は、医学的根拠が不十分で治験の結果を歪曲且つ捏造の疑いのある「狂想曲」と見做すとまで揶揄されたので、日本政府はかゝる風評に躊躇を余儀なくされ、対応策も講ずる事なく今日に至っています。
 一方、イヴェルメクチンは既に特許期限切れのジェネリック薬剤であり、アメリカのメルク社ばかりでなくインドや中国でも今や大量生産して居り、更に罹病者は年間一度の服用のみで、¥3,500程度だが世界的には数百円に過ぎません。
 それで創薬元のメルク社は今更莫大な投資をしてイヴェルメクチンのCovid-19に対する臨床効果の裏付け確認試験をするのは、医薬業界独自の算術と人道的行為とが両立しないとの打算で拒んできました。
 一方、日本では大村先生が理事職にあった北里大学付属病院に於いてのみ医師主導でイヴェルメクチンの裏づけ臨床試験は行われてきましたが、資金不足と被験者不足で停滞していました。