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特集=年末までに生産体制強化=コロナバック完全国産化へ=初国産ブタンバックに期待=ブタンタン研究所コーヴァス所長に聞く

ブタンタン研究所のジーマス・コーヴァス所長(提供写真)

 保健省の国家研究倫理委委員会(Conep)は先月1日、サンパウロ州立ブタンタン研究所が開発中の新型コロナワクチン「ブタンバック」の臨床試験(治験)開始を認めた。国家衛生監督庁(Anvisa)は6月6日に、ブタンバックの人に対する治験の実施を認める判断を下し、同月22日からConepによる5段階の最終審査が行われていた。今回は、100%ブラジル産となるブタンバックの開発指揮をとるブタンタン研究所のジーマス・コーヴァス所長に、ニッパキ紙と合同で独自取材を行った。

年内に緊急使用申請の見通し

 コーヴァス所長は「新たな感染症のパンデミック(世界的大流行)に備えたブタンバックの緊急使用許可は、2021年末までに申請する見通しです」と説明する。
 同研究所は今年4月23日に、Anvisaが要請した全てのデータをまとめた上で、独自に開発したブタンバックの正式な治験の最終許可を求めた。既に治験を開始しており、年内に緊急使用許可を申請して認められ次第、2022年からブラジルと他のラテンアメリカ諸国でも供給できるようになる。
 同研究所がAnvisaに求めた治験は、通常は20週間かけて行われる第1、第2段階を、できるだけ早期にブタンバックの緊急使用許可を申請するために、最初の10週を過ぎた時点で、ワクチン接種による効果の分析をはじめる意向を示した。
 コーヴァス所長は「今年の下半期に入ったら、ブラジルのワクチン接種の実情は変わります。なぜなら、私たちには強力な生産能力があるからです」と自信を見せた。

コロナバックの完全国産化と国産「ブタンバック」の両刀で

 この下半期から来年にかけて同研究所は、二つのコロナワクチンの生産ラインを全力で走らせることになる。
 一つ目は「コロナバック」だ。ブラジルは中国のシノバック・ビオテック社グループと、新型コロナウイルス(Covid―19)のワクチン「コロナバック」の開発で提携した。コロナバックは1月17日にAnvisaから緊急使用が承認され、国内での供給が続けられてきた。
 ブタンタン研究所は、シノバック・ビオテック社グループの製薬会社シノバック・ライフサイエンスとのパートナーシップにより、完全にブラジルだけでコロナバックを製造するための技術移転を進めている。
 同研究所は、コロナバックを生産するための専用工場を持つことになる。現在、工場の建設工事は最終段階にあり、年内中に完了する予定だ。Anvisaによる認証を得た後、2022年半ばからコロナに対するワクチンを製造できるようになる。新工場は、年間1億回分のワクチンの製造と供給を行う能力を備えている。
 二つ目は100%国産のブタンバックだ。医薬組成物(Insumo Farmacêutico Ativo(IFA))を輸入する必要がなく、最初から自国で一から生産できる。
 ブタンバックはインフルエンザのワクチン同様、卵を使ってウイルスを培養して有効成分を抽出するため、全ての材料が国内で調達できる。また、ウイルスを培養する際、選択するタンパク質の種類によって、変異株にも対応できる。
 ブタンバックの治験は、3段階に分かれている。第1段階ではワクチンの安全性と実際に投与する量の評価が行われ、2段階以降は、コロナバックも含めた既存のワクチンと同様の免疫上の効果が得られるかを調べる。

コロナバックの3回目の接種について

 今年上半期から、新型コロナウイルスへのワクチン接種が順調に進められ、経済活動にも少し光が見え始めたかと思われた矢先、多くの国ではコロナに対する免疫をさらに高めるブースター接種(3回目)が検討されるようになった。
 コーヴァス所長は「3回目のワクチン投与は、一部に人々の間で接種スケジュールの変更と言われていますが、そうではありません。現段階では、ワクチン接種のスケジュールは多くが2回のままで、ブースター効果を得るために追加接種の可能性があるということです」とし、3回目の投与に対する認識への注意を呼びかける。
 さらに「ブースター接種は、必要になることは間違いありません。なぜなら、コロナに対する複数のワクチンがありますが、変異株に対しては、明らかにすべてのワクチンで免疫力増強の高低が一定していないからです」と続ける。
 3回目接種の研究で分かっていることは、2回目の接種を済ませた後、6~12カ月以内に接種するのが理想的な時期と言われる。
 コロナバックだけでなく、ブタンバックでもウイルスの変異に合わせてワクチンが変更されるため、ブースター接種についても検討されている。
 ブタンバックの場合、インフルエンザウイルスとコロナを合わせて一つの混合ワクチンにすることも検討されている。

パンデミックでブタンタン研究所が果たした役割

 ブタンタン研究所は、生命科学のサービス120年間の活動実績がある。今回のパンデミックでは、ブラジルや他の国々の免疫化を通じて、コロナに対する戦いで効果的な行動を実行する役割が課せられた。
 聖州内陸部にあるセラーナ市で実施された「プロジェクトS」は、監視された環境でコロナバックの効果を測定するために実施された。
 コロナバックの第3段階の臨床試験での最終結果は、2回の投与の間隔が14日で50・7%、21日以上の間隔で62・3%の有効性が全体の中で示された(科学専門誌ランセットの査定前論文のプラットフォームで公開された調査報告より)。
 コロナバックは、人口全体にわたってテストされた最初のワクチンであり、臨床試験に加えて、実社会においてもその有効性が証明されている。
 ただし欧米メーカーの新型コロナワクチンに比べて、ある意味、コロナバックの有効性の数字が低いことから名前に傷がつけられたような印象になっていることに関しては、コーヴァス所長は「コロナバックだけでなく、ウイルス否定主義的な連邦政府の言動からワクチン購入が効率良く行われなかった。衛生や社会的な隔離の問題などパンデミック全体にわたる連邦政府の否定主義的な行動は、国民全体に害を及ぼしました」と評した。

引き続き、感染予防対策を忘れずに

 高齢者から順次2回のワクチン接種を終え、商店の営業や通学規制も緩やかになってきた。新しい生活スタイルにも慣れ、以前より緊張感が緩んできたという話も聞かれる。
 公園などの開放的な場所で、マスクを着用し、他者とは2メートルの距離を保って安全対策を講じていれば、ラジオ体操や野外俳句会などにも参加できるのではないかとの質問に対し、コーヴァス所長は「今はまだWHO(世界保健機関)のガイドラインを考慮し、社会的距離に加えて、予防接種スケジュールを完了し、衛生対策(手洗い、アルコールジェルとマスクの使用)を徹底してください」と予防対策を十分に遵守した上で行うことを呼びかけた。


ブタンタン研究所の歴史

ブタンタン研究所

 ブタンタン研究所は、1899年にサントス港から発生したペストに対し、抗ペスト血清の生産を目的に活動を開始し、1901年にサンパウロ市西部にあったブタンタン農場に研究所が創設された。
 今日ではサンパウロ州保健局が管轄する生物学研究センターとして、厚生省の国立予防接種プログラム(PNI)で使用される血清やワクチンの大部分の生産を担う他、解毒血清や各種ワクチンの研究と生産、バイオ医薬品の生産、技術開発などに取り組んでいる。
 生物、歴史、微生物学、公衆衛生の四つの博物館を併設し、教育的および文化的活動も展開している。


内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室特設サイト(https://corona.go.jp/proposal/)より転載

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