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迎える年 願い込め「事始め」

 新しい年を迎え、物事を初めて行う一月二日の「事始め」。めでたい日には仕事もうまくいくと信じられ、この日には儀礼的に仕事の真似事だけを行う。習い事の上達を願う稽古始めもこの日のもの。ブラジルでも華道の初生け、茶道の初釜、書道の書き初めなど、新年行事として行うのが慣例となっている。新年を迎えて初めての行為を尊ぶ気持ちは、日本文化の特徴といえよう。

◆新春を生ける

 ブラジルいけ花協会の田中涼華会長は、竹や松、カラー、オンシジウム、トルコ桔梗などを取り入れて「新年」を生けた。生け花は「和」を重んじ、生命感や奥行を感じさせて違和感がないようバランスよく生ける。
 生け花は奈良・飛鳥時代、仏に供える供花から始まった。その後十四世紀から十五世紀に移る室町期に、新しい住宅様式ー書院造が生まれ、生け花の起源となる挿花が現われる。生け花は室町時代に成立する。
 日本から来た人がブラジルの生け花を見ると一様に驚く。日本の生け花に比べると丈が高くてダイナミックで、洋物の花を取り入れて派手な印象を与える。わび、さび感あふれた日本の生け花をそのまま持って来ても、ブラジルでは受けない。
 花は「足で生ける」と言われるほど、いい花を探すのが大変だ。セアザの花市場が毎週火曜と金曜に開くので、早朝からあちこち歩いて花を探して回る。松や竹など珍しい花材は予め信用できる花卉生産者に注文して用意してもらうという。

◆年の初めをことほぐ初釜

 茶道裏千家ブラジルセンター(林宗慶代表)では新年に初釜を行う。初釜は「年の初めを寿(ことほ)ぐ」意味が多分にある。本来茶道の家元や教授者の茶室で行うものであるが、茶室だと格式張った印象を与えるのか「作法を知らない」「正座ができない」と一般の来賓が敬遠しがちなので、ホテルで新年会を兼ねて行う人も多い。床荘(かざ)りは蓬莱山飾りと結柳などを使う。茶席と共に、教授者手作りの懐石料理を出す。
 茶の湯は本来人に見せるものではないが、海外で広めるにはどうしてもデモンストレーション的な要素を取り入れざるを得ない。ブラジルと日本では四季が反対なので、季節感が噛み合わなくて苦労する面もある。

◆心を静め書き初め

 書道家の倉地南峯師範はここ十年間ほど、書き初め大会を愛知県人会会館で行っている。若い世代になると漢字を書くこと自体難しいので、教室では国語の授業のように熟語の反対語を書かせたりと指導している。それでも年々、高齢を理由に書道に親しむ人が少なくなっていく。
 書道をブラジルに広める試みとして、アルファベット書を普及させようという動きがある。身近にある紙やインクを使って高校生が書くアルファベット書を、渡辺少南師範や石川悦子準師範、若松孝司教師、根本次男教師らが、毎日新聞社主催の国際高校選抜書展に送っている。ブラジルのアルファベット書は昨年大賞二点、一昨年に外務大臣賞に入賞している。
 華道、茶道、書道、いずれの習い事を始めるにしても、国産品にはない道具を使わなければならないので経済的に負担がかかる。華道では花鋏や花器、茶道では抹茶と茶せんは日本から輸入する。書道の墨や筆、半紙は中国の物もあるが、日本製が使いやすい。
 ブラジルでこれらを広めるにあたり、ブラジル人に「道」の意味を理解してもらうのが難しい。何かを習うとなると、「何ヵ月たてばできるようになりますか」と質問してくる。「道」は日々精進、一生続く修業であることが分かりにくい。茶道裏千家ブラジルセンターでは初級、中級、上級と分けて指導している。
 日本人は言われたことを黙ってするが、ブラジル人はなぜそうするか、その理由を説明しないと納得して前進しない。池坊ラテンアメリカ橘支部では、二十年前からポルトガル語版のテキストを作り、難しい生け花用語を理解する手助けとしている。
 ブラジルで日本の習い事をするのは大変だが、それでもブラジル人に受けるのはなぜか。多くの人たちが「いいセラピーになる」と話す。意識を集中させて無言のうちに何かを行う。これが日常の雑事を全て忘れさせてくれる。これが日本文化の奥の深さに踏み入れていくきっかけとなる。

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