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今年のブラジル 各界展望

経済成長さらに-選挙ではPTの伸張に注目

 【エスタド・デ・サンパウロ紙エザメ誌二十六日】二〇〇二年への抱負を込めて、各界の専門家のコメントを収録してみた。二〇〇二年は大統領選があり、国民は誰がブラジル丸の舵を取るのか興味深々。五里霧中の国際情勢の中で、ブラジルの持ち味を生かした戦略が、道なき道を切り開いて前進することを期待したい。

◇大統領選 最大焦点に
 二〇〇二年度の次期大統領選に向けた動きは、二つの傾向にまとまってきた。第一は連立与党が政府基盤を背景にして単一候補に絞れるのか、野党に政権を譲るのかだ。第二は現在の経済路線を引き継ぐのか、全く新しい路線による財政政策、為替政策を取り入れるのかだ。
 十月までの政局では、連立与党の単一候補絞りは三月の候補登録までにまとまりそうになかった。PFLはセーラ氏かタッソ氏かの推薦指名に、はっきり態度を示さなかった。PPBは沈黙していたが、ピラチーニ氏の擁立を匂わせた。PMDBはイタマール氏を押さえ込もうとしている。
 ゴーメス氏もガロチニョ氏も、現政権の電力危機や赤字財政の失政を非難攻撃するような先鋭的態度はない。大統領選に向けて両氏は、それほど意欲を燃やしているように見えない。現政府の失政は、それほど不利には作用していない。
 連立与党のPSDB、PFL、PMDB、PPBが単一候補を絞るには、まだ
党内情勢が完熟していない。野党側も、まだまとまっていない。政府与党には連立をうまくまとめれば、大統領選を勝利できる有利な条件は備わっている。
 PFLはじわじわとせり上げているロゼアナ知事の支持票を交換条件の切り札
に用意しているようだ。セーラ氏とタッソ氏の単一絞り込み後、いかにして支持票の遅れを取り戻すか。政府与党の有利な条件を、いかに利用できるかが見所だ。
 いっぽう、四度目の大統領選に挑戦するルイス・I・ルーラ氏(PT)は、以前よりも人間が練られたようだ。施政方針内容も、もっと緻密となった。議会の中でも中道派を積極的に取り込み、多数派工作を展開する必要がある。同氏は硬派の社会主義者ではなくなったが、彼の考え方は投資家らの好感を呼ばない。

◇輸出新たな市場開拓始まる
 努力の結果、遂に二〇〇一年度は貿易黒字にこぎつけた。しかし、二〇〇二年は新しい市場を開拓しなければならない。これまではもっぱら量的にこなしたが、金額ではあまり潤っていない。内容は量で一次産品が五八%、半加工品一七%、加工品二五%。金額では一次産品が二七%、半加工品が一七%、加工品が一一%の状況。
 メルコスール向け輸出は一二・三%減少したが、アフリカ向けが四七・五%増、中東向けが四九%増、アジア向けが一〇%増、東欧向けが九五%増、EU向けが一・七%増、米国向け七%増と、確実にブラシルは国際市場へ根を張っている。
 アフリカ、中東、東欧で、脆弱なメルコスールを十分カバーしている。ブラジルの輸出産業が、農業へ移行しつつある。国際市場でブラジル農業は格好の有利な条件を備えている。ほかに非金属、輸送機器、木材、家具、靴、皮革、繊維、被服、布製品なども有力だ。
 輸出市場が広範囲に実績を挙げているところで、妨げとなっているのが欧米の農産物補助金なのだ。ブラジル特産の農産物がどれも戦略物資であり、欧米市場などの老大国が農産物のために市場開放をすることは、内堀を埋めるに等しい苦しい選択らしい。

◇子供の学力水準問題に
 十二月四日、経済協力開発機構(OECD)の「生徒の学習到達度調査」でブラジル人生徒の学習レベルは、調査三十二カ国中の最下位となった。
 ブラジルの公立校生徒の学習レベルが低い理由は、公立校の教育システムが整っていないため。だが豊かな資本を持ち、高レベルの教育システムを持つはずの私立校の生徒でも、国際学習レベルと比較するとかなり低く、他国の学生と同レベルの生徒は非常に少ない。教育方法の欠点は、裕福な私立校のシステムを分析すれば発覚するだろう。
 ブラジル人生徒の読解力は低い―これが今回の調査結果だ。現代社会は、契約書やマニュアル、薬の使用説明書、コンピュータープログラムの説明書など、読解力は必然となっている。読むことができて、自分で読んだものが分かり、指示内容を理解し、文章のルールの中で推論できることが、これからのブラジル人にとって不可欠となる。
 政府や学校が、今までの生徒に情報を詰め込む教育方法を改革し、生徒の読解力および推論力を養うことが大切である。これを実現させるキーとして、ブラジルの企業家が教育に投資するかが、問われる時期に来ている。

◇基本金利引き下げ
 九〇年代は、金融経済の黄金時代であった。二〇〇一年はバブルの崩壊世界版といえそうだが、景気減速時代の国際社会へ、ブラジルは雄飛しようとしている。
 二〇〇二年の国際経済環境は灰色だが、氷河期ではない。経済規模が収縮するだけだ。米連邦通貨準備委(FRB)は過去四十年で最低の公定金利一・七五%に下げ、景気回復に必死だ。日本シンドロームは十年も泥沼にはまり込んで、いまだに抜け出せず悪夢となっている。
 そのような中、ブラジルは構造改革が着々進行、インフレは征服され、指標金利も引き下げ傾向にあり、為替市場も落ち着きを取り戻した。この経済改革の経験は、将来有望視されている潜在的大市場の中国やロシアなどへノウハウ輸出の可能性もある。

◇インフレ4~5%
 二〇〇二年における各銀行調査部のブラジル経済指標を見てみると次のようだ。(BBはバンコ・ボストン、CBはシテイ・バンク、HSはHSBC銀行、LLはロイド・TSBの略)
[国内総生産(GDP)%]BB二・五、CB二・〇、HS一・五、LL二・五。
[インフレ(IPCA)%]BB四・三、CB五・三、HS五・〇、LL五・二。
[指標金利 (年利%)]
BB一六・五、CB一七・〇、HS一六・五、LL一六・五。
[貿易収支、単位十億ドル]BB四・八、CB五・五、HS七・五、LL五・〇。
[経常収支赤字、十億ドル]BB一九・〇、CB二〇・〇、HS一七・六、LL二〇・〇。
[対ドル為替、単位レアル]BB二・五〇、CB二・八五、HS二・八三、LL二・八〇。
[外国直接投資、十億ドル]BB一六・〇、CB一五・〇、HS一六・〇、LL一六・〇。
[公共債務、GDPへの%]BB五三・〇、CB五六・四、HS五七・一、LL五六・〇。

◇ラ米GDPは向上
 二〇〇二年度ラテン・アメリカの国内総生産(GDP)は一%から二%か、二〇〇一年よりやや良いと見られている。二〇〇三年は停滞分を取り戻そうと、拍車が掛けられるとFRBは予測している。経済成長の可否は外的要因による。
 ベネズエラとエクアドルは原油不振で昨年は経済成長を押し止められた。米経済に九〇%依存するメキシコ経済は、如実に米減速経済の被害を被った。そしてアルゼンチンは暫定政権が樹立され、モラトリアム宣言が行われた。三月には国民投票により新政権が発足するが、外債の決済と財政赤字ゼロという課題が待っている。

◇ネット革新さらに
 〃802・11b〃。この奇妙な数字とアルファベットの組み合わせは、短距離間で電話線なしのインターネットを可能にしてくれる最新技術の名前で、ワイアレス・イザーネット、ワイファイという名称でも知られる。二〇〇一年に米国で大ヒットした発明品で、二〇〇二年にはブラジルでもこの製品を入手できるようになるだろう。802・11bを自宅や事務所で使うには、専用のベースステーションを購入し、高スピードのインターネット回線につないで壁にぶらさげるだけ。そこから四十五キロ範囲にあるパソコンに無線で情報網をつなぎ、インターネットを利用できるようになる。

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