コラム　オーリャ！

　空を飛ぶことを嫌った。『小さい秋見つけた』や『めだかの学校』の作曲で知られる故中田喜直さんだ。先月末、サンパウロ州交響楽団合唱団が、その女声合唱組曲『蝶』を移民九十五周年への讃歌として捧げたのは記憶に新しい。
　第二次大戦で航空隊に志願した中田さんは戦後、二度と飛行機には乗るまいと誓ったという。サンパウロに住むピアノ奏者の白畑智子さんは従兄弟に当たる。白畑さんによれば、中田さんが憧れのウィーン行きを果たすのも、晩年のことになる。
　そういえば九九年のサンパウロ国際映画祭に招待された鈴木清順監督はタラが嫌いだった。ブラジル名物タラ料理を前に、一人箸が進まない。訳を聞けば「戦中を思い出してしまって」。
　戦争は終わっても、「戦後」が終わるには時間がかかる。それをどの国よりも知っているはずの日・米なのだが。　　　　　（大）

03/04/08