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大阪大学 「コロニア語」研究開始=日伯十数人の研究者参加=十七日から福博村で

4月16日(水)

 本格的な「コロニア語」の研究が始まる――。このほど、日本の大阪大学が、ブラジル日系社会の日本語調査を実施することになった。多民族国家ブラジル。日系社会九十五年の歴史の中で、ブラジルの日本語はどのように変わって来たのか。今回のプロジェクトは日伯両国の研究者十数人が参加。聞き取りや文献調査を通じてブラジルにおける日本語の研究を行うもので、その成果が期待されている。最初の調査が来月にかけて、スザノ市福博村とアリアンサ移住地で実施される。
 この調査の正式な名前は「ブラジル日系社会の言語に関する総合的研究並びに保存事業」。大阪大学大学院が実施する「インターフェイスの人文学」プロジェクトの一環として行なわれる。同プロジェクトは日本の文部科学省が打ち出した大学活性化構想〝21世紀COEプログラム〟の一つ。
 調査は日伯両国の研究者が共同で実施する。日本側の代表は大阪大学大学院の工藤眞由美教授(日本語学)。ブラジルからはカンピーナス州立大学のエルザ・T・ドイ助教授(応用言語学)を代表に各地の大学から研究者が参加。サンパウロ州立大学の森幸一助教授(サンパウロ人文研所長)も参加する。
 この研究プロジェクトは大きく分けて、ブラジルに住む日系人を対象に実施する調査と、文献や資料を通じた研究の二つからなる。
 聞き取り調査では、ブラジル国内の日系集団地において日系人の言語生活の実態を調べる。この調査は今月十七日からスザノ市福博村で、五月にはサンパウロ州アリアンサ移住地で実施される。
 このほか、一世を中心に日系人が話す日本語を録音、分析して言語学的な特徴を明らかにする調査も行う。
 もう一つが文献、資料の収集。日本語や日本語教育、コロニア語に関してコロニアで発行された文献を集め、ブラジルにおける日本語や日本語教育の歴史、現状を考察する。また、日系人が書いた書物を通じて、そこに見られるポルトガル語の影響を調べる研究も行われる。
この調査の結果は今年十二月に報告書としてまとめられる予定。ブラジル側研究代表者のドイ教授は、「この調査はこれまでにない本格的な『コロニア語』の調査。一世の減少とともに消えつつあるコロニア語を保存するという点からも、有意義な事業だと思う」と述べ、調査への協力を呼びかけた。

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