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東麒麟の新工場竣工=過去5年で売上倍増=日本国外唯一の〃地酒〃=「酒は日本人の心」

5月22日(木)

 来年創業七十年を迎える東山農産加工(本社=サンパウロ市パウリスタ大通り、岩崎透社長)は日本酒『東麒麟』の醸造工場をカンピーナス市カルロス・ゴメス区の旧工場そばに新設した。二十八年前に建てられた旧工場の老朽化が進む一方、最近の日本食ブームで発注が飛躍的に伸び、生産が追いつかなくなったことから、昨年五月から建設が進められていた。『東麒麟』の売り上げは過去五年間でほぼ倍増を記録。新工場が稼動する今年は、前年比で約一・五倍となる八十万リットルの生産が見込まれる。千二百六十平米の新工場では最大で年間百二十万リットルの生産が可能という。

 二十日行われた竣工式であいさつしたサンパウロ総領事館の佐藤宗一首席領事は「カイピリーニャやカクテルに使用されるなどブラジル人にも(日本酒は)浸透してきた。日本酒は日本人の心。今後さらに、日本人の心をブラジル中に広めていただきたい」と期待を込めた。
 日本から駆けつけた、共同出資会社キリンビールの浅野直道氏(専務取締役)は「(海外で生産される地酒も)世界でいまやこの『東麒麟』だけ。末永く愛されるお酒を目指したい」などと抱負を語った。
 七五年に「半々」で始まったキリンビールの出資比は現在、九割近くを占める。消費者の主体が日本人移住者からブラジル人へと移行したこの二十年間で、売り上げを四倍近く伸ばした。
 浅野氏はこうした状況を踏まえ、「このまま好調が続けば味の向上、品質管理の安定につながるし、技術革新も生む。アメリカ、日本からも輸入品の日本酒が入ってくる時代だが、うちは地元の味、そして新鮮さをアピールしていく」と話した。
 キリンビールから出向する、東山農産加工副社長の渡辺英明氏は「レストランからはさらに品質の高い日本酒を望む声がある」と明かし、いわゆる「吟醸」などアップ・グレードの商品開発を進める準備があることを認めた。
 日本酒のほかに、しょう油、みりん、ソースなどを生産する同社の工場には合わせて三十五人が勤務。うち十二人が働く『東麒麟』新工場は、主にカフェ栽培を手がける東山農場から五キロほど離れた場所にある。

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