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ウルグァイで自閉症児教育を10年=日本人女性教諭が貢献=財団『希望』が10年の記録を1冊に

6月27日(金)

 ウルグァイで自閉症児のために、教育人生の十年を捧げた一人の日本人女性教師を称える小冊子が「南米自閉症児教育に捧げた三枝たか子十年間の記録」として刊行された。刊行したのはウルグァイ自閉症児教育財団『希望』で、記録をまとめたのは、JICAシニア海外ボランティアの竹山隼さん。
 小冊子に推薦のことばを寄せた谷洋一衆議院議員(兵庫県)は、十年前に初めてウルグァイを訪問して自閉症児の存在を知った。東京都三鷹市に武蔵野東学園という自閉症の子供たちのための学校があることも知り、その学園を訪問して、自閉症児の実態と教育があることを理解した。
 このような特殊教育の分野でも、日本の国際協力があってもしかるべきだと考え、外務省に相談をしたところ、当初渋っていた外務省も同衆議の熱意にほだされ、JICAベースで日本人専門家(教諭)の派遣と、ウルグァイ研修生(教諭)の日本受け入れを決定し、未知の分野での国際協力が始まった。
 専門家を武蔵野東学園から派遣することになり、自閉症児教育に経験豊富な三枝たか子教諭が選ばれた。その結果、同教諭は十年間、日本とウルグァイを往復して、ウルグァイ自閉症児の自立に向けて精魂を傾けた。
 当初は子供だった生徒たちが、今では高校生の年齢に達しているため、職業訓練にも関わり、植林とその維持管理、乾燥シイタケのパック作業などが導入された。
 自閉症児は、知恵遅れの子供ではない。脳障害に起因する発達障害のひとつで、先進国や途上国に関係なく、人口千人に一・五人~二人、あるいは、二人~三人の割合で発生するともいわれているが、実態はまだ解明されていない。医学的にもまだ新しい分野といわれ、根本的な治療方法が見つかっていないとされている(本紙・二〇〇〇年十二月九日既報)。
 日本での自閉症児・者が約二十四万人と推定されている現実から見て、南米大陸だけでも日本の倍以上の自閉症児・者が生活をしていると予測できる。
 ひとりの日本人女性教諭の献身的な努力が、日本の国際協力の輪を大きく広げた。谷衆議は推薦の言葉の冒頭で「ウルグアイ自閉症児教育財団『希望』のみなさま、また三枝たか子先生、十年間本当にご苦労さまでした」とねぎらっている。(希望者には小冊子を無料で贈呈します。オイスカ・ブラジル総局、電話0XX-11-3241-1643、にご連絡ください。小冊子の内容は、第一章・自閉症児に会ったことがありますか?、第二章・ウルグアイ自閉症児教育研究グループの活躍、第三章・世界が必要としている生活療法、第四章・三枝たか子ウルグアイの自閉症児に取り組む、第五章・ウルグアイにおける生活療法定着の難しさ、第六章・南米におけるモンテビデオヒガシ学校の役割、第七章・ウルグアイ自閉症者集団自立村建設の夢)。

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