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絵本でパンタナル知って!=A・ニスキエル氏原作『パンタナルの冒険』=京都外大の田所教授が翻訳=子どもの感性をみがく=おとなもたのしめる内容

12月11日(木)

 絵本を通じて、パンタナルの重要さを知って――。京都外国語大学の田所清克教授がこのほど、絵本「パンタナルの冒険」を翻訳し、出版した。原作は元ブラジル文学幹林院総裁で、作家のアルナウド・ニスキエル氏。約二十三万キロ平米を占める世界最大の大湿原を舞台に、トゥユユー(ズグロハゲコウ)ら動物たちの物語を生き生きと描いている。自らも十数回にわたってパンタナルを訪問している田所教授は「絵本としてはもちろん、環境文学の視点から見ても注目に値する作品です」と話す。
 人間によって環境破壊が進みつつあるパンタナルの現状を、動物の視点から振り返ろうと、ニスキエル氏が一九九一年六月に執筆、挿絵はクイアバー在住の画家ヴィクトル・ユゴー氏が担当した。
 同書はパンタナルで展開される十五の場面から構成。シャコロレー湾の夕暮れを描いた「水の風景」など自然の美しさはもちろんのこと、アメリカ豹やワニなど動物も登場する。
 また、主人公的な存在となるのがトゥユユーで、雛を生存競争で失った夫婦が、悲しみのためパンタナルを離れることを決意。一旦は、アルゼンチンのパタゴニアに移住するが、最後には故郷のパンタナルに戻ってくる。
 ユゴー氏の力強い独特な画風とともに、日本語とポルトガル語が併記されている。子供の感性を磨くのはもちろんのこと、パンタナルを知らない大人が読んでも楽しめる内容だ。
 また、同書にはブラジル人が朗読するCDも添付されているため、ポルトガル語学習者にも適している。
 自然をテーマに取り上げた「自然文学」からさらに発展したのが、今回の「環境文学」。人間の自然破壊の実情や環境との共存のあり方を問うているのが「パンタナルの冒険」だ。田所教授は「自然保護政策を国策として掲げるブラジルだけに、ニスキエル氏にはもっと注目すべき」と語っている。
 国際語学社刊行。定価はCD付きで1500円。問い合わせは同社(03・5966・8350)か田所教授が主宰するブラジル民族文化研究センター(www.centro-do-brasil.com)へ。

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