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経営難、ブラジル 金閣寺=納骨堂が売れない 買った人にも渡せない=外国人観光客落ち込む=協力企業も減少

7月2日(水)

 ヴァーレ・ドス・テンプロス社(アロンゾ・B・シャツック社長)のブラジル金閣寺(イタペセリカ・ダ・セーラ市)が経営難に陥っている。納骨堂の販売が伸び悩んでいるのに加え、二〇〇一年九月の米・同時多発テロ事件を境に行楽客が落ちこんできたため。納骨堂はまだ、すべてが完成しておらず、未使用の〃部屋〃を一時的に借りることで急場をしのいでいる遺族も。出稼ぎや景気低迷で個人や企業の協力も減り、管理責任者のテレーザ・アクネさんは、「もう、どうしたらよいか、分かりません」と、途方に暮れている。
 イタペセリカはサンパウロ市から南西三十五キロの位置にある。地形学的な性質が京都市に似通っていることから、金閣寺の建設地に選定された。
 仏閣と中心としたエリアは、「o Parque Nacional Oriental」との通称を持つ。事務所から仏閣へと通じる道には、桜や松を植えたり石の階段をつくるなどして、禅の世界を演出する。
 一般の来場者数は、二年ほど前まで月に二百五十人前後で推移。団体で訪れる外国人観光客も多かった。竣工当時には、「月に二千人を超えたこともある」。 それが、テロ事件後から下降線をたどり、現在は月におよそ百人だけ。入場者料(三レアル)から得る収入も半減以下になった。
 仏閣内と屋外に計六千四百をつくる予定の納骨堂は、価格が四百レアル―二万レアルまで多種にわたる。代金を集めながら、建築を進めている。売上数が期待通りに上がっていないため、資金は十分に集まっていない。
 さらに、担当の職人が高齢のため、休職中で、後任者もまだ、見つかっていない状態だ。駐車場付近にも、今後新たに納骨堂を設けるつもりだが、市からの許可がまだ、下りていないこともあり、何にも手をつけていない。
 販売が頭打ちになっていることについて、テレーザさんは、非日系人にはまだ、火葬が普及しておらず、購入者は東洋系に限られているためだ、とみる。 管理費を徴収していないことも、経営を圧迫する主因の一つ。営業をスタートさせるおりに、販促の目的があった。それが、裏目に出た。大畑天昇重役は、「いずれ改善していかないとダメだ」と、話す。
 遺族の一部は、未使用の納骨堂に故人の遺骨を納めている。所有者が必要とすれば、〃転居〃しなければならない。そのため、「いつになったら、本来の場所で眠らせてあげることが出来るの?」といった苦情も出ている。
 金閣寺は、水道光熱費の節約などで経費削減に取り組む一方、各種イベントを企画、収入源を求める。これまで支援を続けてきた個人や企業が、不景気ため、次々に離れており、経営改善には向かっていないようだ。 
 頼母講を設立、親族が無くなった場合には、上限三千レアルまでを還元する。会員の転居などの理由で、会費の未納が目立つ。死後一年半以上経っても、金銭を受け取っていない遺族もいる。
 最近は、年に二回、所有者に銀行の振込用紙を送付、金額は指定せずに寄付を募っている。
 金閣寺の経営難問題は、隣接する金剛山円光寺にも影響を及ぼしている。地続きの場所に建立されているため、両者が混同され、円光寺が批判の的にされることもあるからだ。
 納骨堂の所有者の多くは円光寺で法要を営む。大畑重役は、円光寺を経営する金閣寺文化協会名誉会長でもある。両者の関係は深い。
 大畑名誉会長は、「円光寺が手を差し伸べなければならない」と、語っている。

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