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コラム 樹海

 こんなにもたくさんの書籍が――。本紙6面で紹介中の「ブラジル事情を知る図書」は巷の話題となっている。先週の二回に続き今週も逐次掲載の予定だが、その数の多さに驚く▼すでに馴染みの図書も多い。が、特定の人を除き、このすべてを読破した人となるとそう多くはおるまい。牽強付会となるが、当地日系書店にすべてが並べられている(いた)はずもなく、一般の〃その他大勢組〃はバスに乗り遅れた観がある。やはり日本は遠い▼この図書リストは日本アマゾンアルミニウム常勤監査役・桜井敏浩さんでラテンアメリカ事情に精通し、その道のベテランである。丹念にまとめての表示は、たいへんありがたい。リストに触発され、ぜひ目的の図書を手にしたい衝動に駆られた読書家もいたに相違ない。それほどに興味をひき、関心をよぶものであった。その労を多としたい▼記載順のトップ《ブラジル社会の歴史物語》田尻鉄也著(毎日新聞社刊)は四年前の出版だ。本の帯には『ブラジル社会の原点はキリスト教と奴隷制度にある』という著者の見方は、現在のブラジル理解にとって極めて有効だと思う――と、人文研・宮尾進所長の〃推挙〃が記されてある▼田尻さん(故人)と宮尾さんはコチア産組の「農業と協同」誌を手がけた古い仲間だ。同時に人文研の研究員でもあり同士でもあった。この書の第六章では「農協の歴史とブラジル農業の行方」を簡潔に、しかも丁寧に掘り起こしている。一読を薦めたい。(田)

03/07/23

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