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「伯の医薬開発に貢献したい」=脱サラ 九九年移住=高橋さん理学博士号取得

11月29日(土)

 「平成の自由渡航者」がパウリスタ連邦医科大学で博士号を取得した。埼玉県出身の高橋真介さん(三九)は九九年三月から同大学院で分子生物学を研究。在学中にミツバチの酵素トリプシンを発見し医薬応用の道を開いたことが評価され、理学博士号を与えられた。
 高橋さんの研究は「ゆくゆく脳溢血や脳血栓の治療薬開発につながるものになる」という。
 東大大学院時代の日系二世教授からブタンタン毒蛇研究所に誘われたのが来伯のきっかけだった。六年勤めた大正製薬創業研究所に辞表を出し昆虫分類技能取得のためロンドン大学に私費留学。準備万端でブラジルに来たが研究所に席はなかった。
 「でもブラジルではよくあること」と思い直し、奨学金を得てパウリスタ連邦医科大学へ。学業の傍ら、学習塾三和学院でブラジル人相手に日本語、英語を教えるなど新天地で専門分野以外の世界も広げた。
 研究はサンパウロ大学との共同作業。「昆虫の消化酵素系の分野では日本の農水省も一目置く人物に指導を受けた」と誇る。
 博士号取得後、「日本でまた就職活動をしなければ」と帰国準備をすすめていたところに、突然、就職の話が舞い込んできた。サンパウロ市で医療開発コンサルタントとして働く道が開けた。高橋さんは振り返る。「いろいろな偶然が重なっていまの幸運があるな」と。
 地元埼玉県人会の会員だ。群馬県人会、香川県人会の会館に住んでいたことがあるため、移住者との交流も少なくない。二十八日来社報告に訪れた際にも移住者の友人らが同行してきてくれた。
 夢は、世界をあっと言わせる医薬を開発すること。ブラジルは素材の宝庫だけにやりがいがある。
 ただ、その製品の特許権を外国企業に奪い取られてきた経緯がある。アスピリン、胆石を壊すケブラ・ペドラなどはその一例だ。
 「これからはブラジルも開発に力を入れていく方針にある。忍耐力には少し欠けるが柔軟性は日本人以上なのがブラジル人。彼らと一緒に頑張っていきたい。

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