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原点「土作り」にこだわる=コチア農業学校=後継者研修でも指導=オイスカと〝基本〟で結びつく

12月12日(金)

 「やっぱり、われわれが取り組んできた後継者研修の基本は正解だったね」と、顔を見合わせてうなずき合った池田之彦さん、鈴川行治さん、佐々木エジガルドさん。コチア農業学校の指導者たちだ。去る十一月二十日、サンパウロ市にあるブラジル日本文化協会(文協)の小講堂で行われた、長野県にある〃がんこ村〃の横森正樹村長の講演会場でのことだ。講演内容は、本紙が十一月二十五日付、さらに二十六日~二十九日付で四回シリーズで紹介した通りである。横森村長が指摘したように、農業の原点は〃土作り〃。農業にたずさわる者は〃体〃で覚えなければ、と力説している。
 サンパウロ市近郊でそれを実践してきたのがコチア農業学校だ。一九八七年の開校以来、一貫してこの原点にこだわりながら、後継者育成を行ってきた。その結果、一九九九年十二月にオイスカ・ブラジル総局が米州開発銀行と無償資金協力の協約書を交わして、南米諸国の農業後継者研修プロジェクトを立ちあげた時、コチア農業学校が研修場所に選ばれたのである。
 オイスカ・インターナショナルは、一九六一年、戦後の復興途上にある日本で誕生した。創立者の中野與之助は「農業の大教育」という理念を世界に向けて発信して、天地の合わせ鏡の間に生きる人間は自然の摂理を遵守して、自然と共に生きる農業を踏襲することが豊かな遺産を子孫に伝えることだ、と提唱した。現在の科学万能農業を予測しての警鐘でもあった。
 オイスカ誕生直後、食糧難に苦しむ近隣アジア諸国の要請に応えて、日本の篤農家をこれらの国々に派遣して、〃緑の革命〃と呼ばれる食糧増産運動に積極的に参加した。篤農家たちが取り組んだのは〃土作り〃であった。この基本行動は現在でも継続されている。このようなアジアでの経験がコチア農業学校の教育原点と合致したのである。
 横森講演会に出席した池田之彦さんは東京農大卒で、コチア農業教育技術振興財団の代表理事だ。鈴川行治さん(二世)はピラシカバ農大卒で、コチア農業学校の教頭である。東京農大卒の父親を持つ佐々木エジガルドさんは親子二代で農業を営んでいる。「ここではボカシや堆肥を中心にして土を肥やすことの大切さを生徒たちに指導しています。科学肥料や農薬は補助剤に過ぎません。土が良ければ、美味しく日もちのする野菜ができますから、健康にも良いのです」という鈴川教頭。
 コチア農業学校とオイスカの結びつきは、理念と行動の共有が基盤となっている。このように、がんこ村のように土作りにこだわる実践例はブラジルにもある。コチア農業学校の特徴は、〃土作り〃の基本が研修生たちを通して南米諸国に徐々に浸透していることである。

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