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コラム 樹海

 日本にいた頃。ゴム採取人やアマゾン河の流域で暮らす人々を相手にして船で行商する「アビアドール」に惚れ込み大河をゆっくりと溯る雄大な風景を描いては自分独りで満足したりした。サンパウロならばヴィアジャンテになって旅の夜空を楽しみたいの野望を膨らませるという若者らしい絵を胸に秘めて気宇を大きくする。これは青年ならば誰しもが持つ夢に違いない▼どちらも商売の話はすっぽり抜けているのに―日々を旅に明け暮れるロマンにどっぷりと酔ってしまう不遜な享楽が若い人の心を惹付ける魅力なのだ。そんな夢にまで見たヴィアジャンテ倶楽部の人々が集まって親睦会を開いたそうだ。その昔はコロニアの大切な情報伝達者たちであり各地の生き字引だった猛者たちも、もうすっかり年老いてしまい参会者の平均年齢は七十五歳▼昨年暮れに忽然として泉下に旅立った寺田賢水さんもだが、ビアジャンテは話芸の大家が多い。商品の売り買いもだが戦前から戦後にかけては大いに持てた話。儲けも大事ながら世事に長ける重要さを懇々と説く人。勝った負けた大論争のときの苦労話は何回となく耳にした。敗戦を知ってはいたが、勝ち組が九〇%の世である。「負けた」とは言えない。が、堂々として「勝った」も言えぬ苦しみ▼来賓として出席した野村丈吾元下議は大正九年の誕生で決して若くはない。傘寿を超す政界の長老だしヴィアジャンテらより高齢かもしれない。ヴィアジャンテの皆さん。老いたなどと言ってはなりません。(遯)

04/01/20

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