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日本文化の伝承を考える(7)=スポーツ漫画の典型

1月31日(土)

 戦後発達したマンガ文化はアニメと発展し、日本を代表する文化のひとつとなっている。新聞・雑誌を並べるバンカや本屋で種々の日本マンガ・ブラジル版が見られる。記者が本屋の店主にインタビューしているのをテレビで見たことがある。店主のコメントによると、今まで主流だったアメリカのマンガは物語の流れに型があって結末の予想がつくけれど、日本のマンガは種類が多く、いろいろの可能性を追求しているので、これから先もっと普及するだろうとのこと。随分の誉められようだが、マンガは質、量ともに世界に誇る日本文化で、この店主のコメントも誇張ではないだろう。ただブラジル人に受け入れられ易いものとそうでないものがあり、これから先どのような種類のマンガが普及するのか興味深い。アニメについても同様のことが言える。
 ブラジルのテレビでアニメ・ブラジル語版の番組が流されている。日本語のオリジナルを見ている日本語とブラジル語の解る子供達によると、ブラジル語版では微妙なことば使いの面白さが失われていて、アニメの良さが損なわれていると言う。
 日本のマンガを詳細に検討して見ると、古くは柔道の「イガグリくん」、時代は下って「巨人の星」「あしたのジョウ」など多くのスポーツマンガが形をかえ品をかえ現在まで続いている。ある漫画研究家によると、スポーツマンガにはひとつの典型があって、それは「努力すれば報われる」という内容になっているという。更に長編ものになると、より強いものが現れ、それらを次々克服して行くという形式が続く。この典型は超能力を競い合うテーマのマンガや武力、戦闘力をテーマにしたものにも見られる。
 ひと昔まえ、連戦連勝し東洋の魔女と呼ばれた日本の女子バレーボールを指導した「鬼の大松」監督の合言葉は、「成せば成る」であった。
 日本では受験生が大学入試に失敗したとき、自分の能力が無く失敗したのでなく、努力が足りなくて及ばなかったと考える傾向が強い。この考え方は子供を勉強、勉強と追いやり過当な受験競争を生む要因となる。この「努力すれば報われる」という考え方は、日本人の能力差を認めたくない考え方と密接に結びついている。そして、これが「誰でもやればできるんだ」という精神主義を生み出す。
 「根性がある」と言えば誉め言葉である。「辛抱強く頑張る、逆境を乗り越え成し遂げる」というようなときに使われる。「精神一到、何事か成らざらん」というような精神主義が、合理的考えを凌駕するときがある。理屈より情緒が優先する。このような心根は大和魂ともいわれ、日本人の精神主義を表す言葉として用いられる。(中谷哲昇カザロン・ド・シャ協会代表)

 

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