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コラム 樹海

 老ク連にJICAから派遣されたシニアボランティアの安達正子さんは、老ク連の機関紙『ブラジル老壮の友』(二月号)を通じて、会員たちに自分史を書き残しておこう、と呼びかけた▼孫がいる六十歳代半ばの二世女性たちから話をきくことがある。それはこうだ。自分の娘、息子たち(三世)は、移民の苦労や祖父母や両親の苦しく哀しかったころの話を知らない、少し知っていてもそれを子らに話して聞かせようとしない、(自分たちは)機会があるたびに、孫たちをつかまえ、自身の両親や自身の、過去の苦(にが)かった頃の生活の話や、日本の唱歌などをきかせている▼三世の親たちは仕事を持っていて多忙である。例えば、子の学校への送り迎えを親に頼む。共働きだと収入が増え、その分豊かになるが、子に祖父母の昔話をしてやるなど思いもよらないということになるだろう▼シニアの安達さんが、呼びかけをした対象、つまり老ク連会員は、曾孫ができたか、もうすぐできるくらいの年代層である。子孫たちは、曾祖父母や祖父母はなぜブラジルに来たのだろう、自身のルーツを知りたい、と思う時が必ずくると言う。そんなときに先祖が書いた自分史があれば、と記述をすすめたのだ▼日系人の農業離れがすすみ、いま都会暮らしの三世、四世は、二代前の祖先が営農していたなどとは実感できないのではないか。サンパウロ州の樹木がほとんど無くなったのは、必要に迫られて自分たちが伐ったということもしっかり伝えたい。(神)

04/02/27

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