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サ・アンドレ地域活性化会議=日系社会の将来を議論=デカセギ、日語を中心に=私達は何ができるか=渡部和夫さん基調講演

3月12日(金)

  百年後の日系社会の姿は? 日本のデカセギ子女たちに対しわれわれは何が出来るかーー。六日サント・アンドレ市で開催された地域活性化会議(JICA助成、文協主催)は基調講演した渡部和夫氏のそんな刺激的な問いかけで始まった。会場のABC文協会館に詰め掛けた約百二十人は元サンパウロ州連邦判事で文協改革の推進者である渡部氏の〃日系社会論〃に熱心に耳を傾けた。講演後は渡部氏を含む日系有識者らが討論。「日本語無料教育の実現」「文協経営のプロ化」「原点である拓魂精神の伝承」などを説く声が聞かれた。

 地方の日系社会の活性化を目指す会議もこれで十五回目。今会議のテーマは「文協と地方文協」で、日系団体が直面する問題、将来的に果たすべき役割などについて語り合った。
 開会あいさつしたサント・アンドレ日伯連盟の牧半治会長は「これから先、日本語、日本文化を守りつづけることが日本人の顔を持つわれわれに課せられた使命」と宣言。
 これに対し渡部氏はその講演で「日系社会の定義は三世の混血婚が四割に上るいま大きく変化している」と語り、「いまや日本人の血を引く人々だけでなく、日系団体に好意や共感を抱いている人々の集まりが日系社会を構成する」と位置付けた。
 文協の役割については、日伯両政府に通じる「窓口である」ことを改めて強調。地方文協の先頭にたって、とくにデカセギ子女の教育・犯罪問題の解決に力を注いでいく考えを明かした。
 そのなかで渡部氏は日本に四万人ともいわれるブラジル人不登校児の存在を懸念し「かつて日本人移民はブラジルの各集団地に寺子屋のようなものを作った。この発想を生かせないか」と問いかけた。
 日本文化の伝承に関しては「まず陽の価値を見定めいかに伝えていくかを考える必要がある。例えば文協では大豆食の普及に取り組んでいる」と語った。
 その後の討論会ではJICAサンパウロ事務所の小松雹玄所長が「ブラジルの日本語学習人口は約一万七千人。最近日系人学習者が年々減少している。英語が優先されるのが理由だろうが日系人として日本語を学ばないのは損だと思う。デカセギ、留学に日本語はチャンスを増やす」。
 また、サント・アンドレ日伯連盟の牧会長は「日本語教育の無料化」を、元連盟会長の竹本泰二氏は「いまコロニアは原点に返るべき。文協ルネッサンスの哲学には拓魂の精神が不可欠」とそれぞれ訴えた。
 ABC文協のシミズ・アキラ会長の要望で参加したサンパウロ大学コミュニケーション学部のヤナゼ・ミツル教授は「文協は素人ボランティアで運営してきたがこれからはプロが参加すべき」と提言。
 このほか、サンベルナルド・ド・カンポ市のミナミ・ヒロユキ市議、イベントプロモーターのニシダ・ロッケ氏、ホーリネス教会のモリグチ・イナシオ氏がそれぞれ意見を発表した。
 最後は小松所長が「このような形で文協と地方文協の交流をもっと促していければ。講演会や講習会の地方開催など『文化の出前』も視野に入れていくつもりいる」と総括した。

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