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「東麒麟」好調持続=東山が創業70年=新旧副社長が抱負

3月27日(土)

  日本酒「東麒麟」の東山農産加工(岩崎透社長)が今年創業から七十年を迎え好調の波に乗っている。ブラジル唯一の〃地酒〃はいまが盛りだ。折からの日本食ブームを受け、過去五年間に売上げはほぼ倍増を記録。サケ人気の勢いは止まる気配を見せない。人事交替のあいさつに来社した渡辺英明前副社長、尾崎英之新副社長に今後の見通しなどを聞いた。
 「わたしがいたころより三倍以上も増えている。この流れを引き継ぎたい」
 尾崎氏はそう抱負を語る。九一年から九六年まで、ブラジル経済の動乱期を財務担当として勤務。資本の九割を出資する日本のキリンビールから二度目の出向となる。
 同社が現行生産販売している商品は「金ラベル」と「辛口生」の二種類。渡辺氏は「消費者の舌が肥えてきている。吟醸か純米か、追加を考えてはいる」と展望を明かす。
 はじめは日本人移民向けに作られていた日本酒だがいまや消費者の大半はブラジル人だ。ただ、「価格帯が上。高級ワインのレベルにある。家庭で飲むというところまでまだいっていない」と渡辺氏。レストランとスーパーでは六対四の比率でレストランに卸す量の方が多い。
 サンパウロ市ではシュラスカリアの数を抜いたと騒がれた日本食レストラン。そろそろ飽和状態では?
 「まだパイ自体は増えている。月に最低一軒はオープニングの知らせが届く」と渡辺氏がいえば、尾崎氏は「前回は経験なかったが今度来てみて、シュラスカリアに日本食が並んでいるのに驚いた。日本酒を置いてくれる店もあって底辺が広がっているな、と」。
 加えて、最近は地方都市にも日本食ブームは浸透し始めた。六年の任務を終えた渡辺氏は「田舎に行っても『東麒麟』をみかけるようになったことがやはり一番印象深い」と振り返り、「これからはフォルタレーザやベロ・オリゾンテといった地方の大都市で販売を伸ばせれば」と期待する。
 新設したばかりの新工場は年間百二十万リットルの生産能力を持つ。昨年の生産総量は約八十五万リットルと、まだフル稼働にはゆとりがある。
 今年四十一歳の尾崎氏は「現地で造っているメリットを最大限に生かしていきたい」と、歴史に安住せずいつもフレッシュな「東麒麟」を強調した。

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