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移住地の中心街は石畳=自助努力で舗装工事=イグアスー=次世代への遺産=43年経て町らしく

5月14日(金)

 ブラジルとの国境に近いパラグァイのイグアスー(Yguazu)移住地の中心街で、自助努力による道路の舗装工事が進んでいる。しかも〃石畳〃なのが特徴だ。
 滝で有名なブラジル領のイグアスー(Iguacu)からパラナ川に架かっている友情の橋を渡ると、パラグァイのシダーデ・デル・エステ市に出る。この市と首都アスンシオンを結ぶ国際道路7号線の四十一キロ地点で右に折れ二百五十メートル進むと、正面に移住地の人びとが南米最大、と自認している鳥居が建っている。イグアスー中央公園の入口だ。
 公園の中心部には天皇・皇后両陛下が皇太子・妃殿下時代の一九七八年(昭和五十三年)にお手植えされたラパーチョ(ブラジルではイペー)と桜が育っている。その中央公園から延びる中央通りで進んでいるのが石畳敷設工事だ。
 二〇〇三年暮れに工事が始まり、今年四月下旬までに六割ほどが完成した。イグアスー日本人会(通称・日会)の副会長で、道路部と事業部を兼務している福井一朗さん(岩手県出身)は「日会・農協・市役所で合同委員会を作り、五年計画で市街地の道路整備を行っている。費用の三分の二は道路沿いの受益者負担で、残り三分の一が委員会の協力だ。材料の玄武岩は日会が(日会所有の採石場から)提供している。道路の基礎工事には日会の重機が使用されている。農協の(資金)協力も大きい。工事だけは地元の業者に委託している」と、市街地の一連の道路整備工事が移住地の自助努力によるものであることを示唆している。
 市役所、病院、学校、日本人会、農協など公道に相当する部分の石畳化はすでに完成している。これらも移住地の自助努力で達成した。日系子弟を含めて地元の子供たちが通う学校周辺の道路の石畳工事だけは、日本大使館を通じて草の根無償資金の助成で対応した。
 中央通りに面する旅館の女将(福岡厚子さん、群馬県出身)は「雨の時のぬかるみがなくなり、乾季の時のすごいホコリが解消されて、家庭の庭やベランダもきれいになってきた。移住地の市街地がようやく町らしくなってきた」と喜びを率直に表現している。
 道路の表面に、厚さ十五センチに玄武岩の粉末を敷き詰め、その上に厚さ十五センチほどに砕いた石を一個一個並べる。最後に上から玄武岩の粉末を撒いて完成だ。玄武岩の粉末は砂よりも粘着力があるため、舗装された石畳は非常に強固で安定感があり、普通の舗装道路に起こりうるような穴が開くことはない。
 パラグァイに着任して間もない日系社会青年ボランティア十九回生の仲本聖子さん(沖縄県、イグアスー農協配属)と早坂理恵さん(宮城県、日系農協中央会配属)は、工事現場の作業員たちを時々〃激励〃して喜ばれている(写真)。
 〃市街地全体が石畳〃は、日本人の目には贅沢なようにも映るが、石畳は自然との共生でもあり、移住地建設四十三年の自信と誇りの証がここにあり、次世代への恒久遺産の一つだ。

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