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ナベ洗い 農場の知恵

5月25日(火)

 かつて入植地でナベ洗いに苦労されたご婦人たちには懐かしい一枚だろう。鍋の底に、水で濡らした木灰を塗っている。弓場農場での一場面だ。
 灰を塗るのは、煮炊きをした後、洗う時にススが比較的容易に落ちるための生活の知恵。灰に石鹸を混ぜると、汚れが落ち易い。薪を燃やして出るススを灰(と石鹸)が吸収するからである。ガスや電気を使う町の生活者には無縁だが、今でもブラジルの農村の家庭では薪が燃料として使われていることが多い。そのため、木灰をナベ底に塗る手法は農場の伝統として継承されている。
 農場で燃料に使われている薪は主として果樹の古木などの廃材。樹木は快適な環境を守り、地下水を貯蔵し、果樹に実りを与え、廃材は燃料となり第二の役割を果たし、その灰が鍋底に塗られる。最後には水と共に大地に還元され、有機肥料の一部となって第三の役目を果たす。自然のサイクルの姿がここにある。
 農村に住む女性たちの生活の知恵は豊かだ。それを通して、モノを大事する心構えが母親から娘に、娘から孫娘に、自然に伝承されていく。町に住む子供たちにも一度は体験させたい情操教育でもある。 (渡)

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