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100周年事業 箱物に拘らず=堀村隆彦新大使語る=「常に次善の策、選択肢を」

5月29日(土) まず、コロニアでの議論深めて――。このほどブラジリアの日本大使館に着任した堀村隆彦ブラジル大使が二十七日、着任挨拶のためニッケイ新聞社を訪問した。サンパウロ総領事として勤務した一九九九年以来となるサンパウロについて「五年ぶりだが、街の印象はあまり変わっていない」と話した同大使。四年後に控えた移民百周年や日伯の経済交流などについて、ニッケイ新聞記者の質問に答えた。膨大な建設費を見込む記念事業「日伯総合センター」についても、堀村大使は「コロニアが自らの未来を見据えた上で、議論を深めるべき」と、語った。
 サンパウロ総領事を務めた九八年の移民九十周年祭では、名誉委員長も務めるなど、コロニアにおける周年事業の大切さを知る堀村大使。「先人の歩みを振り返るだけでなく、未来志向的なものに重点を置くのが望ましい」と単にコロニアの枠組みにとどまらず、ブラジルそして日伯関係にも寄与する記念祭にして欲しい、と強調した。
 また、大使就任以来初のサンパウロ市訪問だけに「各界、とりわけ若い世代がどのようにコロニアの将来像を描いているか聞きたい」と前置きした上で、記念事業については「コロニアでよく議論して欲しい」と繰り返し強調した。
 約七十億円の予算を見込む同総合センターについても、「日本の財政は大赤字。ブラジルはすでに中進国だけに、箱物への多額な援助は難しい」との見解を示した。
 また、百周年祭典協会が巨額な予算を必要とする記念事業だけを打ち出している現状についても「常に次善の策、さらにその次の策を考え、幅広い選択肢を持っているほうがいい」とアドヴァイス、最悪なのは同総合センターに拘るあまり、何も残らない場合だと語った。
 任期中に尽力したい事柄として、堀村大使は日伯両国を取り巻く経済関係の活性化を挙げ、「両国の経済を密接にし、さらには経済の枠組みだけでなく環境や平和など幅広い事柄でブラジルとの協力できる関係を築きたい」と語った。
 八〇年代の「失われた十年」以降、ブラジル経済の不安定さが続き、日本の企業関係者の関心が東南アジアや中国に集中しがちな実情について「まず日本企業の体力回復が大前提。その上で最近安定しつつあるブラジル経済が安心感を印象づければ、活性化につながる」との見方を示した。
 

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