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『ドナマルガリーダ渡辺』ポ語訳出版へ 困難極めた作業 「前山隆の本」8年かけて 若い世代に関心持ってほしい 23日出版記念パーティー

6月18日(金)

  救済会の創立者で半生を日系コロニアの福祉事業に捧げた故渡辺マルガリーダさんの伝記、『ドナマルガリーダ渡辺』(御茶の水書房)がポルトガル語に翻訳され、二十三日に出版される。日本語版の刊行(九六年)後、八年かけて仕上げた労作。同日午後七時から、文協貴賓室で開かれる記念パーティーには、橋本盛作社長と編者の前山隆阪南大学教授らが祝福に駆けつける。発行人の救済会(左近寿一会長)が十六日午後、記者会見を開き、広報した。
 ポ語版のタイトルは『Margarida Vatanabe』。日系関係の図書を専門に扱っているジパンゴ(ZIPANGO)が出版を手掛けた。
 ローマ字表記は正確には、「Watanabe」が正しい。身分証明書が誤って「Vatanabe」と記載されたが、本人が訂正することなく、誤記を通したことから、故人の意思を尊重した。
 日本語版が九六年に発刊されたとき、若い世代にも、ある移民の女性が歩んだ人生を紹介することで、福祉事業に関心を持ってもらおうとポ語訳を決めた。救済会がチームを編成、翻訳を進めたが、作業は困難を極めた。
 前山教授は、渡辺さん個人のライフストーリーと日系コロニアの歴史をそれぞれ縦軸と横軸にとって、文章を綴った。本人の生の声を生かすため、インタビュー内容を多用している。
 渡辺さんは渡伯後、上流階級の家庭に入ったこともあり、気品のあるポルトガル語を話していた。ひとつひとつの言葉選びに、神経を使った。大浦文雄常任理事は「ご子息に原稿を見せたら、こんな話し方はしていなかったと言われたこともあります」と明かす。
 そもそも、個人や組織の背後にある人間関係や移民史に精通していることが要求された。ブラジル日本移民史料館をはじめ、故野尻アントニオ氏、森幸一サンパウロ大学教授、エルネスト・ヨシダ氏などが関わった。
 左近会長は「立派な書籍が出来ました。貴重な文献になるはずです。ブラジル社会一般の人に、読んでもらいたい」と話していた。 一冊四十レアルで三千部発行。問い合わせ電話番号=11・3208・7248(救済会)、11・3082・4188(ジパンゴ)。

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