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「血と汗」の歴史しのぶ=笠戸丸移民から96年=拍手・涙あり、文協法要に人出

6月19日(土)

  今年も一連の移民の日行事がしめやかにとり行われた。午前九時からはサンゴンサーロ教会で記念慰霊ミサ(六面で詳報)に百人以上が、午前十時過ぎからイビラプエラ公園の先没者慰霊碑前で行なわれた開拓先亡者追悼法要には約二百人、文協記念講堂の開拓先亡者追悼大法要にはおよそ七百人が集まった。特に文協では映画上映があったこともあり、昨年より多くの参加者が先人の苦労を偲んだ。

 日本移民九十六周年開拓先亡者追悼大法要が十八日午後一時半から、ブラジル日本文化協会記念講堂で行われ、例年とは異なり映画が上映されることもあり、昨年より二百人ほども多い七百人が集まった。ブラジル仏教連合会、文協、県連、釈尊讃仰会、ブラジル仏教婦人連盟の共催。
 壇上に設置された「開拓先亡者之霊位」を前に、釈尊讃仰会の菅野政美会長は「三―四世の時代に入っていますが、コロニアがこの伝統的行事を毎年開催されることを切望します」と語り、開会の辞とした。
 続いて、ブラジル仏教婦人連盟やエスペランサ婦人会のコーラス部ら約四十人が、開拓先亡者讃歌「道の光」を合唱した。その後、茶道裏千家による献茶、生け花協会の献花、美和会や宮城会による献楽が十五分ほど行われた。
 さらに華やかな衣裳をまとった稚児による献花・献灯、諸僧・導師入道となり、諸団体代表から追悼の辞が奉げられた。上原幸啓文協会長は「初期移民の乗り越えた困難を思う時、哀愁と郷愁に襲われて言葉に詰まります」と語った。
 石田仁宏聖総領事は「ブラジル社会のおける日系の存在感は、先駆者の血と汗と涙の上に築かれたもの。日本に基づく教育の重視こそ、この国に残した大きな遺産と感心しております」と語ると、大きな拍手が会場から湧いた。
 さらに、仏連の渡辺博文会長の導師あいさつ。真宗大谷南米開教監督部監督の浦部玄師による法話では、モジアナ線布教中に起きた悲しい移住者の実話に涙ぐむ参加者もみられた。
 読経される中、一般焼香が行われた。その後、今年は特別に日本のドキュメンタリー映画が無料上映された。約三分の一の参加者は映画のために残った。一本目は、笠戸丸以前の移民で初めてブラジル校教師となった野上姉妹、中川トミさんなどの証言が記録された『遥かなるみちのり』(移民八十周祭典委員会制作)。二本目は、一九五五年頃ブラジル丸が神戸港を出航する時の記録『神戸と移民』。


 =県連慰霊祭=滞ることなく厳かに=

 県連(中沢宏一会長)は十八日午前十時半からサンパウロ市イビラプエラ公園の先没者慰霊碑前で、日本移民開拓先亡者追悼法要を行い、日系団体代表ら二百人以上が列席した。
 慰霊碑前には各県人会の先没者名を記した過去帳がおかれ、ブラジル仏教連合会が法要を仕切った。読経が響く中、出席者らは献花・焼香した。
 途中、むつみ幼稚園の園児が「聖者の行進」や「川は呼んでいる」などをコーラス。その後、中沢宏一県連会長と、石田仁宏サンパウロ総領事が慰霊碑に向かい深々と頭を下げ、追悼の辞を読み上げた
 続いて、ピオネイロ校の生徒たちが「ふるさと」を合唱。生徒を代表してスギモト・よしみ・ソフィアさん(9歳)が出席者を前にあいさつ。「正直まじめで働き者の血をひいた私たち日系人があるのは、ここに眠っているおじいさんやおばあさんのお陰。私は日本語がまだ上手く話せませんが、一生懸命勉強したいです」と元気よく語った。
 神道による開拓先亡者追悼法要もあり、列席者は献花と玉串を捧呈した。

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