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コラム 樹海

 家族は「唐書」か取った言葉らしいが、夫や妻と子供らが一緒に暮らし朝飯も晩ご飯も一つのテーブルを囲む。子らは学校や友達の話を忙しげに語る。親父どのはと言えば、黙然として茶碗と取り組みながら「無言の対話」を楽しむ。尤も、近ごろは父親も一角の「語り部」でないといけないらしいが、昔の親父どのは「寡黙」が看板なのである▼と、いささか古めかしい話ながら―こんな一家団欒の風景は今も昔も変わらない。家族三人との再会が決まった曽我ひとみさんは「大変うれしい」と大いに喜び笑顔をふりまいている。ご主人が話好きなのかどうかは知らないが、曽我さんとしては楽しい家庭の味をしっかりと噛み締めたい気持ちで胸が一杯なのだろう。それにしても、曽我さんらの拉致被害者は真に不幸な半生を強いれた▼二十六年前の夏。新潟県は佐渡島の自宅近くで北朝鮮の工作員に襲われ拉致される。それも一人だけではない。母親のミヨシさんも一緒に襲われ北朝鮮に連れて行かれた。そして今も、ミヨシさんの安否はわからないのだ。いや生きているのか死亡したのかもはっきりしない拉致被害者は十人もいる事にもしっかりと目を向けたい▼金正日総書記は「白紙の状態で再調査する」と語ったが、今もって「調査中」の回答では誰しもが満足しまい。北朝鮮の説明では、横田めぐみさんらは死亡し墓も流失してもうない。送られて来た遺骨を分析したら全くの別人であったでは話にもならない。―と、北朝鮮による拉致の解決にはまだまだ道は遠い。  (遯)

04/07/03

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