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売却、移転、賃貸?=母県の補助金削減で難しい県人会館維持=悩みの種尽きない役員=カラオケ禁止の建物も

8月5日(木)

  どうする?どうなる?県人会館――。一世の高齢化とともに、運営のあり方が懸念材料となっている各県人会。カラオケなどの親睦会に留まらない若い世代を引き込んだ活動にどう取り組むか、が悩みの種だ。多くの県人会長が「県人会館を上手に活用するには」と頭をひねるが、そんな会館が「諸刃の剣」となりかねない。日本からの補助金が年々減りつつある中、会館の維持費が大きな負担となっている。「将来的には売却する可能性もある」との見方を示す県人会もある一方で、すでに会館を貸し出し、安い物件に移転した県人会も。鹿児島、高知、東京の事例を追ってみた。

■豪華な会館が足かせに
「県人会館を売ることも考えては」
 今年六月の会合で思いがけない発言が出た鹿児島県人会。サンパウロ市パカエンブー区の高級住宅街の一角に構える同会館は、各県人会の中でも最高級の豪華なもの。広いスペースにはプールなども備えられており、県人会幹部も「会館の魅力が若い世代をひきつける」と認めるほど。
 そんな同県人会だが、昨年十月の記念式典で予想外の出費約十万レアルなどが負担となり赤字状態が続いていることから今年、初めて会員からの会費徴収に踏み切った。ところが千家族の目標に対し、現状ではわずか百家族足らず。記念誌の発行も滞ったままだ。
 若い世代を引きつける「武器」と期待されたプールも水代が月に五百レアルもかかるなど、厳しい財政を圧迫する。
 これまでは想像もつかなかった厳しい現状に「このままでは会館を手放さざるを得ない」との危機感も募り始めたという。まだ現実味はないものの、福留清相談役は「当面はありえないが、一世が少なくなった将来にはそういう声も強くなるかも」と話す。
■カラオケと騒音問題
 一方、高齢の会員にとっての楽しみがネックとなったのが高知県人会だ。ピニェイロス区の高級住宅街にある同会館は、数年前カラオケの騒音を巡って、地域住民から訴訟を起こされた。そのため、現在ではカラオケなど音がうるさい行事は自粛せざるを得ない状態だ。せっかくの施設を持ちながら、他県のイベントにも貸せない状態が続き、財政的にも足を引っ張っている。
 「何年か前に売却の話が出て、母県にも了承を得てはいるのですが……」。高橋一水会長は、会館を売る気になれば、いつでも手放せる状態にあることは認めながらも、当面は売却することはないと言う。ピニェイロス区に県人が多く住むことや、愛着が染み込んでいることなどが理由だ。
 カラオケは県人会活動に欠かせないだけに、高知県人会の二の舞を踏むまいと、昨年完成した広島県人会館、来年落成する宮城県人会館では防音設備を充実。会館を有効利用する体制を整えている。
■削減する補助金
 南米最大の金融街、パウリスタ大通りの一角にあるビルの五階を所有している東京都友会は今年五月、同じビルにある十九階に移転した。留学制度への補助金が打ち切られたことに伴い、都からの補助金もなくなり会館維持が難しくなったためだ。
 一九八九年に都の補助もあり購入した会館はコンドミニオだけでも月に二千レアルと高額。「とても払えない。仕方なしに会館を貸し出し、自分たちは安い部屋を借りました」と坂和三郎会長は苦しい胸のうちを説明する。
 十九階に借りる部屋はやや手狭だが、家賃は六百レアル、コンドミニオ四百レアルの計千レアルの出費で済む。貸し出す会館の家賃収入が二千五百レアルのため、単純計算では毎月千レアルが浮く。「職員の人件費や諸経費を抜いても五百レアルは余ります」と坂和会長。今のところ売却の考えは全くなく、今のまま会館運営を図る考えだ。
 八〇年代から競って建てられてきた県人会館。母県の緊縮財政、一世の減少などの中、一つの転機を迎えているようだ。

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