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南米移住史を日本の教科書に!=子どもに何を伝えるか(3)=移民の貢献大のブラジル=棄民意識は一般的でない

11月2日(火)

 力行会の永田さんは「日本政府がいいことばかり言ってブラジルに送り込んで、そのままアフターケアをしなかったというのは、当時としては極めて普通のことだったわけで、棄民という意識がその時点からあったかどうかは疑問。むしろ、ある時点から振り返って見た時、その時の常識に照らし合わせたら棄民だったという認識になったのでは。現在から見たら棄民かもしれないが、当時はそう認識していなかったのでは」と指摘する。
 第三アリアンサ生まれで、ブラジルの日系団体を代表するブラジル日本文化協会の第一副会長、吉岡黎明さん(二世、六八)は「今まで教科書に記述がなかったんですか。そりゃ、ぜひ入れなきゃいかんと思うよ」という。「例えばアリアンサでは最初から土地を買って農場主として入植しているわけで、あくまで自分から選択している。捨てられたとかという意識はまったくないと思う」とし、棄民意識は決して一般的ではないとする。
 サンパウロ人文科学研究所の元所長、宮尾進さん(二世、七三)は以前から、移民史を日本の教科書に入れるべきだと主張してきた。「戦争と関係してきた満州移民といっしょくたにして、南米移民史を小・中・高の教科書に入れないのはおかしい。南米に来た移民はそれとは関係ない。まったくねぐっちゃってる(削っちゃっている)のは酷いよね」と語り、政府が移民を〃棄民〃扱いした後ろめたい意識がそうさせているのではないかと推察する。
 そもそも「移民」という言葉から、様々なニュアンスを感じ取る人がいる。宮尾さんがブラジルからのNHK生中継番組に出演した時、同社スタッフから「移民という言葉を使わないで〃移住者〃にしてほしい」と言われた経験がある。「〃棄民〃に通じるような印象をもたせるからダメ」と説明されたそう。「移民は差別語ではない」と主張し、結局、宮尾さんのみOKということで押し通したが、他の出演者は「移住者」に置き換えさせられた。
 NHK本社に直接問い合わせたところ、差別語ではないとのことだった。ただし、以前移民という言葉を番組の中で使ったところ、「移民した人を傷つける言葉だ。若干、棄民のニュアンスがあるから使うべきでない」という抗議を受けたことがあるという。
 「移民の日」「アマゾン移民」「ブラジル日本移民百周年記念祭典協会」など邦字紙上に「移民」という言葉が登場しない日はないほど、ブラジル在住者の多くにとっては誇りのニュアンスが強いだろうが、そうでない人がいることも事実。例えば、志し半ばで日本へ帰国し苦々しい移住経験しかない人であれば、思い出したくもない言葉だろう。そのような帰国者が数多くいることや、教科書が日本国内で使われることを思えば、ある種の配慮が必要なのかもしれない。
 ブラジル国家形成にあたって、各国からの移民が果たした役割が大きかったことは周知の事実であり、それを説明する教科書の記述、副読本教材もある。
 ブラジルの教育事情に詳しい吉岡さんは「教科書によってまちまちだが、詳しいものになればイタリア移民の中には戦前にファシスト運動をしていたグループがあったとか、工場でストライキを主導していたこと、マタラーゾ(イタリア移民一世で同財閥創立者)のことを説明しているものまである」と、移民と歴史が不可分であることを説明する。
 宮尾さんは「ブラジルには五百万人もの外国移民が入った。特に移民が多く入った南部三州とサンパウロ州は産業の中心となっている。新大陸において移民は重要な存在だ」という。なかでも日本移民が農業分野で果たしてきた貢献は広く知れわたっており、それは日本移民の誇りでもある。送り出し国が持つ「移民」へのイメージと、受入れ国がもつそれへの違いは、この辺にも原因がありそうだ。
 つづく(深沢正雪記者)

■南米移住史を日本の教科書に!=子どもに何を伝えるか(2)=肯定的な部分を強調して=苦労話、自虐史観でなく

■南米移住史を日本の教科書に!=子どもに何を伝えるか(1)=「忘れられたら困る」=山田長政はあるのに・・・

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