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南米日系農協連絡協議会『日伯農協間ビジネスについて』――――=今こそ日系農協の出番=環境事業から食品輸出まで

12月8日(水)

 十一月二十四日に行われた南米日系農協連絡協議会(原林平会長)の第一回幹事会で午前の会議に引き続き、農務省の山中イジドロ農務補佐官、JETRO(日本貿易振興機構)サンパウロ事務所の澤田吉啓次長を招いて、『日伯農協間ビジネスについて』のテーマで懇談会が行われた。その懇談会の内容を、その後二人に電話取材して詳細を補足した。
 日本の企業や自治体が計画するブラジルに関する事業が「現在、約七十ある」と山中補佐官は語る。一九九八年から二〇〇二年の間、商工省顧問として日本に滞在。中小企業の誘致や輸出促進を目的に関係企業と接触を図ったところ、「当時でも約五十の案件があった」という。
 「ガリを百五十トン作って、日本に輸出して欲しい」と希望する高知県の食品関連企業や、「ブラジルに進出するので、石油から抗菌剤を抽出するのに必要なエタノールを現地で提供して欲しい」とする化粧品会社などを例に上げた。
 「農業とは関係のないものもあるが、こうしたプロジェクトを受け入れるには農協が手軽な単位」と強調。こうした企業と日系農協を結び付けるには「窓口となる大きな組織が必要だ。ブラジル農業拓殖協同組合中央会(以下、農拓協)や同協議会がその役割を果たせる」と語った。
 輸入規制が厳しいことから、「日本はやりにくい市場だ」との声も参加者からあがったが、「日本で売れるということは、世界のどこでも売れるということ。逆にその厳しさを利用すべき」と山中補佐官は切り返した。
 日本の厳しい輸入規制に対応するため、食品輸出には商社を通すことが少なくないが、「商社は大口の商品を扱いたがるため、個々の農家で求められる分量を安定供給するのは難しい」と澤田次長は指摘。「求められる分量をまとめられる大きな組織があれば、ビジネスとしておもしろい」と同協議会の可能性も示唆した。
 話は温室効果ガスの削減に絡むビジネスにも及んだ。京都議定書で定めた温室効果ガスの削減目標は、一九九〇年の排出量に対して六%削減だ。
 それを日本が達成するためには、途上国の温室効果ガス削減事業に関与し、減少した排出量を自国の削減量に加えることのできる、クリーン開発メカニズム(CDM)と呼ばれる制度を利用することが「是非とも必要な状況にある」と澤田次長は言う。
 CDM事業として、ゴミ処理の際に生じるメタンガスの回収プロジェクト、火力発電の風力発電への切り替え、重油の代わりにサトウキビの搾りかす(バガッソ)を用いて自家発電しCO2の排出量を削減する方法、また森林化によってCO2を吸収する案などを例に上げ、「自家発電がらみの事業などで、農業者や農協の事業展開が考えられるものがあるかもしれない」と語った。日本の同制度活用の対象としては当然、ブラジルも視野に入る。「中南米に日本を引っ張りたい」と澤田次長は熱意を見せた。
 今後、農拓協や同協議会が期待される役割を担うために、加盟農協の生産情報把握など、中央組織としての機能を更に強化することが必要となってきそうだ。
 山中補佐官が取り上げた案件に興味のある人は11・5572・9157(農拓協)、澤田次長の取り上げた案件に関しては11・3141・0788(JETROサンパウロ事務所)まで。

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