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届け3351人の熱い思い=署名最終報告まとまる=県費留学研修制度=存続へ向け=新たに813人分追加

12月11日(土)

「自分達の子供ら次世代にも同じ思いを経験してもらうことが、日系社会の発展につながる」

 存続が危ぶまれている県費留学生・海外技術研修員制度について、理解と継続を呼掛けてきた日本留学生研修員ブラジルOB会(ASEBEX、木村マウリシオ会長)は、このほど昨年九月に開始した署名運動についての最終報告をまとめた。今年八月の段階で集まった二千五百三十八人分の署名はすでに後藤博子参議院議員を通じて十月に外務省へと手渡されているが、以後新たに九月にも八百十三人分が集まり、最終的には三千三百五十一人がASEBEXに賛同した。自ら日本に留学し、署名活動に参加したOB、OGらは「この制度の重要さを身をもって知っている。ぜひ続けて欲しい」と口を揃える。

 移住者の子孫に両親・祖父母の祖国である日本で勉学・研修の機会を与え、両国の掛け橋となる人材を育成することを目的に始まった同制度。
 これまで外務省の地方公共団体補助金により事業資金の半額が助成されていたが、平成十六年度より従来あった外務省からの事業予算の半額が打ち切られ、各都道府県だけで同制度の費用を全額負担することになった。これを受け、各都道府県では、廃止や受け入れ人員の削減、本人の一部自己負担などが実施され、将来的な継続が疑問視されている。
 同制度で日本に渡ったOB、OGらは「この制度が日伯両国に欠かせない」「後続の若い世代にも体験して欲しい」と継続を強く希望。昨年七月に行われた戦後移住五十周年記念式典出席のため、サンパウロを訪れた後藤参議に陳情したところ、署名活動を勧められた。
 同九月に具体的な計画が練り上げられ、日本やブラジル各地で会員らが先頭に立って署名を呼掛けた。
 昨年、岩手県に一年間留学した阿部貴司アイレスさんは、留学を通じ、自らを流れる「ジャポネス」の血を自覚した一人。「ブラジルだけにいては、なかなかルーツにまで思いが及ばない」。日本滞在中に祖母らに接したことが、「自分探し」のきっかけにつながった。来年度から副会長に就任する阿部さんは「自分達の子供ら次世代にも同じ思いを経験してもらうことが、日系社会の発展につながる」と制度の重要性を訴える。
 各県人会の協力などもあり、今年八月の段階では二千五百三十八人分の署名が集まり、後藤参議から十月に谷川秀善外務副大臣に手渡されている。
 さらに九月だけで八百十三人分を集め、日本へと送られた。最終的に三千三百五十一人の賛同者を集めたことに木村会長は「皆さんの協力で当初の目標よりも成果が上がりました。ありがとうございます」と声を弾ます。
 木村会長によると現在八百人を超える会員を持つASEBEXは、同制度のOB、OGだけでなくJICAや国際交流基金など他制度で日本に渡った人も会員に取り込み、日伯関係強化のためにも組織充実を目指す方針だ。
 実際、県費留学生制度ではなく国際交流基金から留学した経験を持つ松酒早苗クリスチーナさんも署名をした一人で、先月ASEBEXの会員になった。「実際に日本で学ぶことで言葉や文化をより吸収できる」とその効果を強調。先細りが懸念される県人会運営についても「この制度があることで県人会が日本との接点を保てる」と話す。
 三千三百五十一人分の署名に込められた思いが日本政府に届くことを関係者は強く願っている。

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