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在外投票実現までの道程=ロスの邦人が一冊に

2月4日(金)

 昨年の参院選で初めて実現したサンパウロ総領事館の公館投票。利便さに喜びを感じる人も多かったが、二〇〇〇年以前には在外邦人には選挙権さえ与えられていなかった。「母国の国政選挙に参加したい」。こんな思いを胸に世界各国の在留邦人が在外選挙権獲得に向けて活動した十年間の軌跡が一冊の本として出版された。「海外から一票を! 在外投票運動の航跡」(明石書店)と題されたこの本は、中心的な役割を果たした「海外有権者ネットワークLA」の会長で、アメリカ・ロサンジェルス在住の高瀬隼彦さんがまとめた。
 一九九四年海外在住者投票制度の実現をめざす会が創立されて以降、ニューヨークやオーストラリアなどでの署名活動などを経て、同会は東京において海外有権者ネットワークとして組織変更。アメリカやオーストラリアだけでなくフィリピンやハワイなども加わった。ブラジルでは当時県連会長を務めた網野弥太郎さんが中心となり、コロニアに理解を訴えた。
 軌跡を記した項では活動の発端から九八年に公職選挙法の一部を改正し、〇〇年以降に行われる選挙から在外投票ができることになるまでをまとめた。
 また世界各国の在外選挙の実情などをペルーやロンドン、シドニーの現地在住者が報告。登録までの煩雑さや郵便投票の問題点を指摘している。
 市民運動が国会を動かし、選挙制度を改善させるに至った十年間の歴史だけに国連難民高等弁務官をへてJICA総裁に就任した緒方貞子さんも本の帯の中で「日本が国際平和にどう貢献できるのか。海外在住の日本人の情報や視点はとても大切」と評価。また、元朝日新聞記者で現在テレビニュースのキャスターを務める筑紫哲也さんも「限定的とはいえ在外投票を実現させたのは画期的。海外区から国会議員を選ぶようになればいい」と話す。
 四百六ページで定価二千八百円。

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