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日系人支援見直しへ=JICA移住チーム長が来伯視察=削減必至 広がる不安

3月4日(金)

 いよいよ、Xデーが来るのか? 千坂平通JICA中南米部次長(移住チーム長)が二月二十八日、文協、援協、農拓協、ブラジル日本語センターの四団体を訪問。関係者らと意見交換した。JICAの支援業務について、評価・見直しをするのが大きな狙いだったとみられる。各団体とも、移住事業のトップが来伯したことを重く受け止めている様子だ。「JICAが我々からの仕事から手を引くのは、間近なのだろうか」。日系人向け予算が年々減少し、サンパウロ支所が縮小・撤退するとの流言が広がる中、関係者は危機感を募らせている。
 「ブラジルの日系関連の予算は十億円以上あったんですが、平成十六年度には、六億円にまで減ってしまいました。より必然性が高い事業を、残していくという姿勢の現われなのではないでしょうか」
 日系関係の予算を司る千坂次長が直々本部から派遣されたことについて、石橋隆介サンパウロ支所次長はそう見解を示す。
 組織改編後に示した中期計画の見直しが二〇〇七年三月に、行われる予定。それを踏まえての千坂次長の来伯とみられる。移住関係のトップが直接、関係者に会って、JICAの実状に理解を求めようという狙いもあるようだ。
 関係者によると、中南米で支援している日系五十団体を、四十団体に削減する案も出ているという。
 関係団体に配布した資料によると、移住地の営農、デカセギの状況、日系コミュニティの現状を把握するのが目的。
 その上で、「年度計画で重点分野としている日本語を中心とした人材育成事業の平成十七年度、十八年度の実施計画の参考となるような情報・意見交換を行う」と記述されている。
 「海外移住事業・運営指導調査団」と銘打った派遣団には、千坂次長のほかに、水上貴雄海外日系人協会業務部主任、長野正玉川大学教育学部教授が加わっている。
 一行は、アルゼンチンからブラジル入り。三月一日にJICAブラジル事務所を経て、ボリヴィア、パラグアイ、ドミニカに〃説明行脚〃に向かった。

自立の道模索/企画持ち込む=対応迫られる関係団体
    
 こうした動きを関係団体は、どう受け止めたのか。
 援協は、JICAの助成金を受けて、巡回診療を実施している。健康ブームの影響もあり、二〇〇〇年に七十四地区だったのが、〇四年に八十七地区に増えた。一方で、助成金額は約十七万レアルで、年々減額している。
 具志堅茂信事務局長は「戦後移民がこれから高齢化を迎え、一世の老人は増えていくとみられる。仮に援助が無くなったからといって、巡回を止めるわけにはいきません」と使命感を燃やす。
 だが、先立つものが無かったら死活問題に発展しかねない。「巡回先を減少するなどの対応を迫られる恐れがある」との不安ものぞく。
 農拓協は昨年度、年間予算四十五万レアルのうち約六万レアルの助成金を受け、セミナーを開催するなど交流、広報事業を行っている。この助成金も年々、減額されており一昨年からは二割がカットされている。
 意見交換会に出席した原林平前会長によれば、千坂次長は「近い将来、助成金は打ち切られるだろう」と明言したという。農拓協幹部は「やむを得ない」として自立への道を模索する考えのようだ。
 日本語センターは、青年、シニアボランティア合わせて四人が派遣されており、恵まれた環境にある。とは言え、楽観視は出来ない。年間予算約百万レアルのうち、七割をJICAに頼っており、支援の有無は組織の浮沈に直結しかねないからだ。
 同センター側から、教師研修の重要性などついて、強いアピールがあったとみられる。
 丹羽義和事務局長は「JICAは、事業に対して、援助をしますという立場だと思う。だから、こちらが積極的に企画立案して向こうに持ち込めば、必ずいい結果が生まれるはず」と語り、褌を締めなおす覚悟だ。

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