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食と健康そして環境=連載(1)=考えよう健全な水と食材の確保=水源地汚染じわりと=硝酸態チッソ、生活に影響

3月12日(土)

 サンパウロの水道水は、味や匂いに違和感を覚える、という人は多い。各地で有機農業を指導している農業コンサルタントの成田修吾さんは、大量に使用されているチッソ(農薬)が農作物にすべて有効に吸収されず、残留分が雨水によって移動、水源地を汚染しているのではないか、と疑う。また、生活排水、工場廃水による水質汚染。すべて原因は人為的だ、とする。私たちの生活環境に多大な影響をもたらすこれらの問題。どうしたら健全な水が確保できるか考えたい、とつぎのように寄稿してきた。

 私たちが食する野菜や果物などの農作物栽培には、栄養三大要素のチッソ・リン酸・カリが必要なことは既知の通りですが、肥料を与えても植物の根から吸収される養分は、四○%~五○%しかないことは意外と知られていないようです。
 露地栽培の畑で土中に施された肥料分のチッソは、無機のアンモニア態や硝酸態チッソに変化して、根から吸収されるのですが、残った養分は土隗に吸着されず、雨水などによって下層に流亡・移行します。
 チッソ過多の畑では、農作物が濃度障害を引き起こすことは、生産者間でもよく話題になることです。また、一部は脱窒菌で窒素ガスに変化して空中へも飛散しますが、土中の下層部に移行した残留窒素は長期にわたって地下水を汚染したり、雨水で表土や土砂といっしょに湖や川に流されたり、果ては海にまで達して汚染範囲が広まっていきます。
 これが多量に私たちの身体に入って蓄積されたとしたらどうなりますか。顔や手足の皮膚の色が暗褐色に変わるチアノーゼ症状を引き起こすのです。とくに乳幼児の場合、こうした水でミルクをつくって飲ませたりすると大変危険です。酸素を運ぶ血中のヘグロビンが硝酸態窒素と結合し、体中の酸素不足を起し死亡した事例が米国にあります。大人でも、ブラジルだから日焼けして黒いのだ、などとは言ってはおられません。残留した硝酸態窒素が発ガン物質を生成する可能性も指摘されているからです。
 ここ数年、サンパウロの水道水の味に気がついておられるでしょうか。農業やゴルフ場、公園などで大量使われている化学肥料の窒素成分やリン酸成分、生ゴミなどに含まれる余剰窒素が硝酸態窒素になって水源地を汚染していない、と言いきれるかどうか大変疑わしいところです。
 一般に水道水質規定値一○ppm(一ppmは百万分の一㌘)以下とされていますが、果たしてサンパウロの水道水はどのくらいの数値なのか判りませんが、飲むときの匂いや味に違和感を覚えるのは確かです。
 各地農産地で、化学肥料の多用が続いて、地下水が有害な硝酸態窒素で汚染される、アーグア・ミネラルが急に売れ始めた、と耳にしますと大きな危惧を感じます。ですが不思議とサンパウでは大騒ぎもせず、ジッとガマンしながら飲んでいるようですが、これでいいものでしょうか。もっと、水道の水質を厳しく検察し、主因を見つけ、根本から水質改善していかなければ、私たちの命も危うくなりかねません。
 かねてから私は仕事柄、農業生産者のみなさんへ、減化学肥料、減農薬農業をお薦めしています。農業が「自然環境を破壊」とか「農業が地下水を汚染」などと衝撃的な記事にならないように、堆肥、木酢液、木炭併用の有機農業を各地に赴いて説明させていただいております。各地域ごとに考えて欲しいと思うからです。
 読者のみなさんもいっしょに考えていただけませんか。どうすれば、健全な水と食材を、安心して消費できる社会になるかを。(つづく)

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