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百周年「笠戸丸賞」創設へ=予算調達案なども承認=主要団体欠席、団結に課題=祭典協会理事会

3月22日(火)

 百周年を記念して「笠戸丸賞」を創設し、日系社会に貢献のあった人などを表彰するプランが、ブラジル日本移民百周年祭典協会(上原幸啓理事長)の理事会で十九日承認された。昨年度会計報告、今年度会計予算が審議された他、多額の資金貢献をした人に送られる「協賛者表彰」や、カルネ方式の資金調達案も同日、承認された。三十二人いる副理事長のうち、オザスコ文化体育文化協会代表ら十人が出席したが、援協、県連、商議所などの主要団体は欠席し、「日系団体の団結」に課題を残した。四月三十日開催予定の総会で、正式に承認される見通しだ。

 午前九時半から文協内の同祭典協会会議室で行われた理事会では、まず、二十二日に正式発表される百周年ロゴマークについて、大原毅氏と太田レオ氏から説明があった。
 続いて、〇四年度会計報告(年末締め)。総収入は七万七千四百五十四レアル(以下、単位はレアル)で、大半を占める七万七千五十六が会費だった。総支出は五万八千四百六十四で、主な内訳は人件費が約六千、地方や他州に委員らが行く時の交通費七千八百八、文協への家賃や共益費一万三千九百八など。残高が約一万八千九百九十だった。
 〇五年度会計予算は、総収入三十六万を計上しており、前年比で四・五倍になっている。内訳では、前年比五〇%増しの十二万と大幅な会費増収を目論んでいる。その他、昨年はほとんどなかったイベント収入や、今年から始める予定のカルネ方式の調達資金などをあわせて二十四万を見込んでいる。
 支出も三十六万で、うち二万四千が文協への家賃や共益費、新しく事務局長や職員を雇う希望があり人件費も十万、委員などの出張にかかる交通費に二万などとなっている。
 「笠戸丸賞」は移住者とその子孫に対し、大きな貢献のあったブラジル人や日本人を表彰するもので、質疑のあと承認された。表彰状と、黄緑と赤白の帯のついたメダル、貴金属付きのピン(胸ポケットなどにとめるピン状の記念品)が授与される。ミナス文協代表から、「どのような基準で人物を選考するのか、明確な基準を明らかにしてほしい」との要請があった。
 「協賛者表彰」は金額により、三千以上、六千以上、一万以上、二万以上の四段階に分かれている。やはりピンなどが授与される。百周年関連イベントなどで、祭典協会理事長から直接手渡されると説明があった。
 出席者からは「地方は地方で百周年行事を予定しており、そこへの貢献でも祭典協会は表彰をしてくれるのか」などの質問があり、選考方法や基準などともに後日の検討課題となった。
 また、中谷アンセウモ財務委員らが考案したカルネ方式の資金調達法(十六日詳報)についても説明があり、承認された。
 当日の出席者は約二十五人だが、同協会事務局によれば副理事長は十人、残りは委員などだった。

記者の眼=移民ビデオ制作計画=人気取り? 突然動き出す

 百周年理事会の最後に、吉岡黎明プロジェクト委員長から、八十歳以上の移住者らのオーラルヒストリー(口述による歴史証言)をビデオの形で残す「百周年遠征隊」について説明があり、承認された。各地でビデオを撮ってもらい、それを移民史料館に集め、記念本制作や展覧会の資料として活用するというもの。
 ただし、「ただ単に記録しても使える資料にはならない。後々問題にならないように、キチンとした人物選考方法、インタビュー内容や方法をしっかりしておく必要がある」「史料館で集めても、その後の作業が膨大なものになる。どこから費用を捻出し、誰がやるのか、しっかりとした計画がまず必要」との厳しい指摘が相次いだ。吉岡委員長は「大学の専門家に協力を依頼する」と答えた。
 本紙〇四年一月一日付け記事「秘められた移民史収集=全伯調査後、巡回展を」によれば、〇三年に史料館が祭典協会に提出した時点の、この計画の予算総額は〃約三百万レアル〃だった。協会関係者によれば、祭典協会が資金を工面して実施し、史料館に業務委託料を払うという。
 同史料館単独では不可能な計画であるため、百周年記念事業に提案していた。史料館の原案では詳細な調査計画が書かれていたが、今回理事会に提案されたのは紙一枚で、予算すらも書いてないが、なぜか承認された。本格的に動き出せば費用もかかると予想されるが、今のところ予算案には特別な計上項目はない。
 また、すでに承認されている「箱物」以外の九十二プロジェクトの一つだったが、なぜこれだけが文協役員選挙前に突然動き出したのか何ら説明はなかった。一部では「一世向けの人気取り。選挙向けか」との声もささやかれている。計画自体は期待されているだけに、やるからにはしっかりしたものにしてほしい。
 また現在、祭典協会には法人(団体)会員八十八、個人会員四十五人が加盟しており、合計で百三十三。全伯に四百五十の日系団体があり、休眠状態のブラジル日系団体連合会(UNEN)でさえ加盟団体が約百三十あったことを思えば、まことにさみしい状態だ。今年の予算にある五〇%の会費収入増からすれば、今年だけで四十団体以上の加入が必要となるが・・・。
 今回の理事会のように、主要団体が首を揃えて欠席しても開催し、わずか十人の副理事長だけで全伯に関係する議題が決定される。いったい、このままでいいのだろうか。   (深)

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